女子マラソンの40キロ付近を走る福士加代子=14日、ブラジル・リオデジャネイロ、林敏行撮影
4回目の五輪で、福士加代子(34)が14日、初めてマラソンに挑んだ。
女子マラソン、スムゴング優勝 日本勢最高は福士14位
「なんで加代子は走り続けるんかな。俺にも分からねんだ」。青森県板柳町で理容室を営む父正幸さん(67)は言う。
正幸さんは、わが子の初マラソン挑戦で見た光景が今でも忘れられない。
8年前の1月、北京五輪の選考会を兼ねた大阪国際女子マラソン。序盤はハイペースで独走したが、30キロ付近からスタミナ切れで失速。終盤は、転倒しては起き上がり、そしてまた転倒を繰り返した。
長居陸上競技場でゴールを待つ正幸さんと母のちぎ子さん(65)の目の前にはふらふらになっているわが子がいた。「沿道にいたら『もうやめろ』って大声で言っただろうけど。母ちゃんは、加代子を見てらんなかった」
医務室に運び込まれた福士はベッドの上に寝そべっていた。もうマラソンは走らないだろう、と思った。
2004年のアテネ五輪で陸上1万メートルに出場した後、こんなことを言っていた。「1万メートルは25周もトラックを走らなきゃいけなくて嫌だ。5千メートルだとその半分だから楽」「2時間走るなら映画を見ていた方が楽しい」
だが、福士はやめなかった。11年のシカゴ・マラソンで、3年9カ月ぶりにマラソン再挑戦。翌年には転倒の地・大阪国際を走った。13年の世界選手権では銅メダルを獲得。今年1月の大阪国際で優勝し、リオ五輪の出場権をつかんだ。