繁華街だった中島本町は大半が焦土と化した。劇中に登場する大正屋呉服店は、平和記念公園のレストハウスとして使われている
8月6日の広島原爆で失われてしまった街並みが、アニメで正確によみがえる。今秋公開の映画「この世界の片隅に」では、片渕須直監督が6年がかりで大量の資料や旧住人らの証言を集め、探偵のように「忠実な姿」を探り当てていった。「暮らしも原爆も、幻やフィクションでなく確かな現実だったと感じてもらうため」と片渕監督は話す。
特集:核といのちを考える
原作は、こうの史代さんの同名漫画。広島・呉で戦時下を生きる女性すずの日常を丹念に描く。彼女が度々訪れる広島市も重要な舞台だ。
原作にほれこんだ片渕監督は独りで制作準備を始めた。広島に30回近く通い、集めた資料写真は4千点を超す。代用食の試作もした。衣食住から街並み、軍港の様子まで考証は多岐にわたる。特に力を入れたのが映画の冒頭、1933年暮れに幼いすずが、現在は平和記念公園となっている旧中島本町の繁華街を歩く場面。被爆建物のレストハウスも当時のまま「大正屋呉服店」として登場する。
当時の写真、地図、スケッチ、…