出展された夜着。木綿地に鳳凰(ほうおう)や桐(きり)の模様がある。豊島松子さんのお気に入りの一つ=豊島吉博さん提供
江戸時代後期から昭和初期に普及していたとされる着物型の掛け布団「夜着(よぎ)」を集めた「昔の夜着展」が28日、愛媛県砥部町で始まった。同町の女性が集め、屋根裏にしまっていた76点が約40年の時を経てよみがえる。鳳凰(ほうおう)や鶴などが生地いっぱいに鮮やかに描かれ、当時の庶民の生活の一端がいきいきと浮かび上がる。(森本美紀)
展示会に協力する愛媛県歴史文化博物館によると、夜着は全体に綿が入り、襟や袖が付いて着物より大きい。寝るときは基本的には袖に手を通さず、掛け布団のように使われた。仮眠する時などにふだんの着物を体に掛けていたのが布団に発展した、との説がある。
嫁入り道具でもあり、木綿地に鶴や亀などめでたい吉祥模様をあしらったものが多い。寝ている無防備な時に、邪悪なものが近寄らないよう魔よけの意味もあるという。襟や袖で首や肩周りに隙間ができにくく、寒さを防いだが、軽くて暖かい布団の普及で使われなくなったとみられる。
夜着を集めたのは、砥部町に住む豊島松子さん(91)。昭和18年、18歳の時に東京の女子経済専門学校(現在の新渡戸文化短大)の寮で、同室の北海道出身の同級生が持っていた夜着を初めて見た。暖かく実用的で「うらやましく、自分もほしくてたまらなかった」という。
卒業後に帰郷した後は結婚、出産、育児に追われた。子育てを終えた昭和50年代、民俗資料に興味がある弟に誘われ、衣装専門家や趣味の仲間を通じて着物や帯などを収集するなかで、再び「夜着」に出合った。「私が憧れていたのはこれだ」と積年の思いがあふれた。
すでに夜着自体が少なく入手は難しかったが、松子さんは1年に数点ずつこつこつと集め、自宅隣の町屋の屋根裏部屋にしまった。何点あるのかもわからないまま、3年前に高齢者施設に移ったが、「死ぬまでに展覧会をしてほしい」との思いを聞いた長男の吉博さん(67)が今年2月、整理したところ、長持ち三つと布団圧縮袋に丁寧に包まれた夜着があった。
写真を見た県歴史文化博物館の…