力投する広島新庄の堀=小川智撮影
「ひとり」では勝てない――。広島新庄のエース堀瑞輝君(3年)が仲間から学んだことだ。140キロ台の速球を持ち、延長十二回となった初戦、2回戦を1人で投げ抜いた絶対的な柱だ。かつて周りを見渡すことができなかった自分を変えた。17日の大会第11日第3試合、木更津総合(千葉)に0―2で敗れたが、仲間を信じて投げ抜いた。
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昨夏も甲子園のマウンドに立った。当時「怪物1年生」と注目された強打者・清宮幸太郎君(2年)を擁する早稲田実(西東京)戦で先発したが四回途中で降板。1点差で敗れた。新チームを引っ張る立場になったが、野手が失策したり、自分の投球に納得できなかったりすると表情に出た。迫田守昭監督(70)から「ムスッとして投げるな」と言われたが、試合になると「頭に残っていなかった」。
昨秋の中国大会1回戦でコールド負け。10月、寮の会議室で約40人の同級生でミーティングを開いた。厳しい指摘が飛んだ。「お前の気持ちが切れたらチームの気持ちも切れる」。エースに周りは萎縮していた。チームがバラバラになるという思いから出た言葉だった。
味方がミスをしても「おれが抑えるけ、OK」「楽にいこう」と声をかけるようになった。しかめっ面をしないよう、帽子のつばに自分で「笑え」と書き、マウンドで眺めては歯を見せた。捕手の古本幸希君(3年)は「堀がこの1年で成長したのは精神面。打たれても味方が失策しても、周りに声をかけるようになった」と話す。
甲子園での3試合、チームの失策はわずか1。野手陣は「堀に頼ってばかりではだめだ」と守備を徹底して鍛えてきた。堀君も泥だらけになって練習しているみんなの姿を見てきた。「その姿を信じ、打たせていこうって思うようになった」。この日も笑顔で野手に声をかけ続けた。「甲子園でみんなで楽しめて本当によかった」。負けても表情は晴れやかだった。(松崎敏朗、西村圭史)