女子63キロ級の表彰式で金メダルにキスをする川井梨紗子=林敏行撮影
レスリングの女子63キロ級で金メダルに輝いた川井梨紗子(21)はおっとりしているように見えて、実は人一倍負けん気が強い。
伊調避け転向、嫌だった増量… 川井の忍耐、金に結実
特集:リオオリンピック
初めて出た2012年の女子世界選手権。2回戦で敗れ、頭が真っ白になった。何もできずに歯がゆさだけが残った。「もう試合で後悔だけは残したくない」。以来、全力を出し切ることを信条にしてきた。
元々いた58キロ級には、絶対女王の伊調馨(32)が立ちはだかった。それでも逃げるつもりはなかった。「馨さんに勝つからこそ意味がある」。昨年3月、伊調のけがでワールドカップの代役が回ってきた時は「日本の58キロ級は馨さんだけじゃない」と奮起し、日本の優勝に貢献した。
伊調と争うより、五輪出場の可能性が広がる63キロ級に挑むべきだと周囲に説得されたが、逃げるようで嫌だった。恩師の説得で渋々決断した後も、エントリー用紙の階級欄にギリギリまで「63」と書けなかった。
この日、安定した試合運びで世界の頂点に立った。試合後、階級変更について聞かれ、「今でも思い出すと悔しいけど、それがあって今がある」。そして「もう63は終わり。また58に戻す。馨さんに勝って(東京五輪で)金メダルをとりたい」。堂々と宣言した。(野村周平)