相模原市で昨年6月に阿部由香利さん(当時25)の遺体が見つかった事件で、東京地裁(鈴木巧裁判長)は6日、死体遺棄罪に問われた農業秋山智咲被告(24)=静岡県富士市=に対し、懲役1年執行猶予3年の判決を言い渡した。判決は、「人の死体だとは思っていなかった」という被告の主張を退け、「人の死体かもしれないという認識があった」と、死体遺棄の故意を認めた。
判決によると、秋山被告は2013年6月、交際していた佐藤一麿被告(30)=死体遺棄罪で有罪確定、殺人罪で起訴=の求めに応じてレンタカーを借り、ビニールシートに包まれた物を東京都世田谷区内のマンション自室に運び込んだ。7月まで自室で保管し、その間はホテルで生活。7月になって佐藤被告と相模原市内の墓地の空き地に穴を掘り、ビニールシートで包まれた状態のまま遺棄した。
公判では、人の死体だと認識できたかが争点となった。弁護側によると、秋山被告は佐藤被告から「大手お笑い事務所社長が飼っていたトラが死んで、その死体の処理を頼まれた」と説明を受けていた。秋山被告自身は「トラではなく犬だろう」と思っていたが、「人とは思っていなかった」と一貫して主張していた。
だが判決は、秋山被告の主張を退けた。犬の死体を処分するのに、計62万円以上の費用をかけて約1カ月もホテル暮らしを続けたとする点などを「不合理」と判断。「秋山被告の弁解は到底信用できない」と断じた。その上で、異臭がするという通報を受けて、警察官が自宅マンションに来た際に、秋山被告が虚偽の説明をしていたことなどから、「警察官にうそをついてまで隠すべき死体と考えていたとみられる。人の死体かもしれないと頭に浮かぶはずだ」などと指摘した。
「私たちとしては全く納得していないし、当然秋山さんも納得していません」
判決後に記者会見した主任弁護人の泉沢章弁護士は、こうした判決の認定を批判し、控訴したことを明らかにした。
弁護側は「佐藤被告との関係が事件に大きな影響を与えたが、裁判所はその点を考慮していない」と批判。「『疑わしきは被告人の利益に』という原則がある。秋山さんが『人の死体だ』と認識していたといえる明らかな証拠がないのなら無罪とすべきだ」と述べた。(塩入彩)