コミュニケーション行動が少ないなど自閉症の特徴を示すマウスを、九州大の中山敬一教授らの研究グループが遺伝子を操作して作った。自閉症になる仕組みの解明や治療薬の開発などに役立ちそうだ。8日付の英科学誌ネイチャーに発表した。
研究グループは自閉症の人の大規模な遺伝子解析でCHD8という遺伝子が変異している人がいることに注目。この遺伝子の働きが半分になるマウスを遺伝子操作で作製したところ、ほかのマウスのにおいをかいだり追いかけたりするコミュニケーション行動が減り、不安を感じやすくなるなどした。
胎児期の神経発達障害が自閉症の原因だとされている。研究グループがこのマウスを使ってCHD8の働きを調べると、神経の元になる細胞から神経細胞への発達を抑えるRESTという遺伝子の働きを抑制する役割をしていることがわかった。研究グループは、CHD8に変異が起きることでRESTの働きが活性化して、神経の発達に何らかの影響が出たとみている。
中山教授は「RESTの働きを抑えるような薬剤の開発が考えられ、自閉症の治療薬になる可能性がある」と話している。(瀬川茂子)