10期ぶりに名人に返り咲いた高尾紳路九段=3日午後7時15分、甲府市、堀英治撮影
「40歳の誕生日(10月26日)を対局で迎えたい」。七冠王・井山裕太名人(27)に簡単には負けまいとの決意のはずだった。8月下旬に始まった囲碁名人戦七番勝負で望外の開幕3連勝。ところがあと1勝が遠く、一転して3連敗する。最後の最後で王者の勢いを食い止めての名人復位。はからずも「不惑」を迎えていた。
第41期囲碁名人戦七番勝負
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高尾紳路九段が名人奪取 囲碁名人戦、井山の七冠崩れる
棋士デビューは中学3年。10代の頃から脚光を浴びたが、20代後半までビッグタイトルに恵まれなかった。30歳となった直後、名人に。絶頂期が訪れた数年後、早くも「井山時代」が来てしまった。
棋士人生初の負け越しの屈辱を味わった昨年、「このまま下降線をたどって棋士として終わりか」と不安になった。骨太な囲碁の打ち筋からつけられた「重厚戦車」のニックネームに似合わず、心は繊細。若手たちに活躍の場を譲ろうと、「もう世界戦には出ない」と衝撃の発言をしたこともある。
昨年の名人戦で井山名人に4連…