厳しい試合を勝利に導いた立命大RB西村七斗は、何度も天然芝のフィールドにたたきつけられ、いつになく背中が汚れていた
アメリカンフットボールの関西学生リーグは5日、大阪・ヤンマースタジアム長居で第6節の1試合があり、2連覇を狙う立命大が10―6で関大を下し、6戦全勝とした。立命は5戦全勝の関学大とともに2位以内が確定し、両校の全日本大学選手権進出が決まった。今季から西日本代表を決めるトーナメントに関西2位校も組み込まれたことにより、立命と関学は20日のリーグ最終戦と12月4日の西日本代表決定戦で、1シーズンで2度対戦することが濃厚になった。
立命が最終節の決戦を前に、関大に苦しめられた。この日最初の攻撃シリーズを、第1クオーター(Q)2分2秒にRB森本紘介(4年、日大三)の16ヤードタッチダウン(TD)ランで締める上々の立ち上がり。しかし、その後は関大の強力守備陣を崩せず、ミスと反則のオンパレード。ただ関大も攻めきれず、2度のフィールドゴール(3点)のチャンスも、主将の地村知樹(ちむら、4年、関大一)が第2Q終盤と第3Qの最初に失敗した。
ここから関大は、前節まパス成功率39・1%と苦しんでいたQB大内勇(3年、箕面自由)が奮起する。吹っ切れたようにパスを決めて、敵陣5ヤードへ。第3Q11分26秒、QBの位置に入った地村がエンドゾーンまで持ち込んでTD。しかし、ここでもTD後のキック(1点)をキッカー三輪達也(2年、兵庫・舞子)が失敗。立命10―6関大となった。
試合残り6分57秒、関大は敵陣46ヤードから攻撃開始。いきなり大内がWR中村聡吾(3年、広島観音)へ39ヤードのロングパスを通してゴール前7ヤードへ。ゴール前3ヤードから第4ダウン3ヤード。ここでエースRBでもある地村に託したが1ヤード届かず。残り4分42秒、立命はランで時間を消費しながら前進し、このまま試合は終わった。
立命の米倉輝監督(45)は疲れ切った表情でミーティングの輪から出てきた。そしていつも通り、報道陣の質問が飛ぶ前に自分から語り始めた。「情けないゲームでした。関大さんがほんとに強かった。ディフェンスは頑張りましたけど、オフェンスは現状の姿が出てしまった。ただ、関大の大内君が2週間で別人のようにパスを通したように、学生は短い期間でも生まれ変わる。黒星がついたわけじゃないんだから、しっかり自分たちを見つめ直せば、またいいオフェンスができると思ってます」
ミスが続出した立命の攻撃陣を引っ張ったのがエースRBの西村七斗(3年、大阪産大付)だった。徹底マークを受けて独走はなかったが、25回ボールを持って、計120ヤードの前進。どれだけ強いタックルを受けてもボールを落とさず、しぶとく前へ進んだ。彼は言った。「俺がやってやる、と思って走りました」
関西2位になると、地方リーグの戦いを勝ち上がってきた大学と対戦、勝てば関西1位と再戦だ。エースは言う。「このままだと関学に負ける。2週間で変わりたいと思います」
一方の関大。主将の地村は涙が止まらなかった。「僕がキックを決めて、タッチダウンもとってたら……。僕のせいで負けたようなもんです」。一人何役もやってきた男はすべてを自分で背負いこんだが、関大が今季も立命と関学の壁を越えられなかったのは選手だけの責任ではない。
攻撃担当のコーチが、ベストアスリートのTE青根智広(3年、龍谷大平安)を生かすプレーをしなさすぎた。大内から青根へのショートパスがいつでも決まる状況を作っていれば、関大の今季は変わったはずだ。青根自身、1シーズンを棒に振ったとの思いが強いだろう。
立命の米倉監督は「関学と2回やることが想定できたシーズンなんて初めてです。我々にとっては、厳しいけど楽しいことです」。6日は5戦全勝の関学大が京大(2勝3敗)の挑戦を受ける。一足早く6勝目を挙げた立命の面々は、関学の一挙手一投足に注目している。(篠原大輔)