ウィルバー・ロス氏=ロイター
トランプ米次期政権の商務長官候補に、知日派で「再建王」として知られる著名投資家ウィルバー・ロス氏が浮上した。ロス氏は環太平洋経済連携協定(TPP)について「私は好きだ」と支持する発言をしており、起用されればトランプ氏の通商政策に影響を与える可能性がある。
特集:ドナルド・トランプ氏
米ウォール街の重鎮でトランプ次期大統領を支援してきた著名投資家カール・アイカーン氏は15日、自身のツイートで、ロス氏と財務長官候補に挙がっている投資会社経営のスティーブン・ムニューチン氏の名前を挙げ、「トランプ氏と話をした。ムニューチン氏とロス氏が財務長官、商務長官候補として検討されている」と言及。「両方とも素晴らしい選択だ」とコメントした。
ロス氏は米ブルームバーグの今年5月の番組で「私はTPPのトランプ氏の立場には賛成しない。私はTPPが好きだ」と発言。そのうえで、「貿易協定はもっと力強いものでなければならない。巨額の貿易赤字などの問題もあり、どう対処するかだ」と話した。
ロス氏は今年9月、朝日新聞の取材に、選挙戦の最中にトランプ氏が掲げた過激な政策などについて「多くの攻撃的な発言もあったが、彼自身が公で謝ったものがあることに注目したい」と指摘。大統領職に就けば、政策が「現実路線」に修正されるのではないかと期待していた。ロス氏は選挙後の10日、米メディアに対し、トランプ氏が主張した中国への45%の関税措置について、「間違って引用されており、彼の意図するものではない」と後退させている。
ロス氏は、日米交流団体のジャパン・ソサエティーの会長を務めるなど知日派として知られる。経営が行き詰まった企業を立て直す「再建王」として知られ、1999年に破綻(はたん)した幸福銀行(現関西アーバン銀行)の再建などを手がけた。(ワシントン=五十嵐大介、ロサンゼルス=畑中徹)