那覇地裁沖縄支部前で「差止め、またもや認めず」などの紙を掲げる弁護士たち=17日午前10時13分、沖縄県沖縄市、岡田玄撮影
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の周辺住民が、国に騒音の差し止めと損害賠償を求めた第2次普天間爆音訴訟で、那覇地裁沖縄支部(藤倉徹也裁判長)は17日、騒音被害を認め、国に約24億5826万円の損害賠償の支払いを命じた。一方で、騒音の差し止め請求は退けた。
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賠償請求が認められたのは、原告団3417人のうち宜野湾市を中心とした住民3395人で、基地周辺の騒音レベルの等しい地点を結んだ線(騒音コンター)で「うるささ指数(W値)」75以上の地域に暮らす。それ以外の地域に住む原告22人は対象外として退けられた。
藤倉裁判長は判決の中で「W75以上の地域に住む原告らには、会話、電話、テレビやラジオの視聴、勉強、家族のだんらんなど、日常生活の様々な面での妨害や心理的負担が生じている」と述べ、騒音の違法性を認めた。さらに「1次訴訟で騒音被害が認定されたが、防止対策に特段の変化はなく、違法な被害が漫然と放置されている」として、日米両政府を批判した。
米軍基地の飛行騒音を巡っては、住民の被害を認める判決が全国でほぼ定着している。普天間飛行場についても、2002年提訴の第1次訴訟では原告約400人に対し、計3億7千万円を賠償するよう国に命じた10年の福岡高裁那覇支部の判決が確定。住民が賠償だけを求めた別の訴訟では、15年に那覇地裁沖縄支部が、住民約2100人に対し総額約7億5400万円の支払いを国に命じている。
一方、騒音の差し止めについては「騒音を生じさせているのは米国。日本政府は米軍機の運航などを規制できる立場にない」として退けた。
米軍機の飛行差し止めについては、これまでも、普天間のほか横田基地(東京都)や厚木基地(神奈川県)など各地で裁判が起きているが、今回と同じような理由などで、いずれも退けられている。
今回の訴訟は12年に提訴。原告は差し止め請求の対象を「米軍機の飛行」ではなく「騒音」そのものに切り替えることで、基地を提供している国も米軍と共に加害者になっていると主張していた。
閉廷後、裁判所前に集まった原告団に島田善次団長は「失望の至りの判決。根本的な問題は解決していない。今後も(飛行)差し止めを求めて闘うしかない」と語った。弁護団は会見で、騒音の差し止めを求めて、福岡高裁那覇支部に控訴すると発表した。(小山謙太郎、吉田拓史)