子どもを乗せるため、チャイルドシートを車に積み込むワーカー
■小さないのち 児相の現場で
「いやや」母は刃を腹に 赤ちゃん「職権保護」の瞬間
「いまから来い」子と引き離された母、電話越しの怒声
特集「小さないのち」
バジルのパスタを食べようとしたときだった。
午後9時半すぎ、西日本にある児童相談所(児相)でいつものように残業をして帰宅した女性ワーカー(児童福祉司)の携帯電話が鳴った。遅い夕食とはいえ、夫と向かい合い、ほっとした時間を過ごそうとしていた。
児相からの着信に胸騒ぎがした。この日の夜は、緊急事態が発生すれば、対応しなければならない当番にあたっていた。
病院から、虐待が疑われるとの通報があったという。小学生が脳振盪(しんとう)を起こして運ばれたので、病院に行って確かめてほしいとの依頼だった。
女性ワーカーはすぐに自宅を飛び出した。車を運転して約1時間。ほかのワーカーと病院で落ち合い、父親から何があったのかを聞いた。「質問しても息子が何も答えなかった。小突いた後に押し倒し、足で踏んづけた」と女性ワーカーに話したという。子どもは吐き気を訴え、そのまま入院した。
帰宅したのは午前0時すぎ。夫はすでに寝ていた。ひとりで冷めたパスタを食べ、床に就いた。翌朝は午前8時半に出勤。その後、入院した子どもの一時保護に向かった。
虐待の対応チームに入って4年目の30代。大学を卒業後、別の仕事をしていたが、子どもが虐待で亡くなるニュースを見て、「自分が救う側に回りたい」と、この世界に飛び込んだ。
だが、日々何が起こるかわから…