税・社会保障負担が増え、消費は減った
平成の約30年間で、一般的な働く世帯の税と社会保険料の負担が月に約3万4千円、率にして36%増えたことが分かった。この間物価は1割上がったが、消費に回した額は逆に約4千円減少。年金や医療などの負担で、働く世代の暮らしが先細った姿が浮き彫りになった。
「重税感」増す日本の仕組み 所得再分配の効果、下位に
大和総研の是枝俊悟研究員が朝日新聞社の依頼で試算。家計調査などをもとに、働く人がいる2人以上の世帯の月平均の実額(名目)を1988年と2017年で比較した。
89年4月に税率3%で導入された消費税の負担は、8%の17年で月1万9711円。88年にあった物品税を差し引いても、間接税の負担は9471円、率にして52%増えた。
一方、所得税や住民税による直接税負担は月1612円(4%)減った。消費税導入や5%への税率引き上げに伴い、所得税などが減税されたからだ。直接税と間接税を合わせた税負担全体では7859円(13%)増だった。
税より負担が増したのが、年金や医療などの社会保険料。17年は月5万6869円で、88年よりも2万5946円(84%)増えた。年70兆円増えた社会保障費を賄うために保険料が値上げされたからだ。
社会保険料は、税金に比べて使い道が見えやすく、引き上げに国民の理解が得やすい。安倍政権が消費税率10%への引き上げを2度延期するなど、政治が不人気な増税を避ける一方、社会保険料に高齢化のしわ寄せが集中している形だ。
17年の税と社会保険料の合計は月12万6966円。収入に占める負担割合は5ポイント上昇して26%になった。
この間、収入も月5万2570円(11%)増え、53万3820円になった。ただ内訳をみると、2万4479円(6%)増だった世帯主の収入に対し、配偶者の収入が2万1128円(49%)増。女性の社会進出に加え、夫の収入が伸び悩む中で共働きが増えたことも背景にあるとみられる。
消費(税を除く)は17年、月28万5439円で88年より1%、3618円減った。消費者物価は消費税の影響を除いて約1割上がっており、消費は実質的に1割強減ったことになる。
家計へ負担増を強いた国も借金が増えた。増税が進まない中、税で賄う社会保障費の3割部分が増加したためで、18年3月末の国債の発行残高は、29年前の5倍強の853兆円になった。
一方、膨れあがったのは企業部門が持つ現金だ。財務省の法人企業統計によると、企業の現預金(金融・保険除く)は16年度末、過去最高の211兆円で、88年度末より4割以上増えた。法人税率が42%から23・2%に引き下げられたこともあり、平成に生まれた富が企業に流れ込む構図になっている。(大日向寛文)