金剛山の登山を楽しむ韓国の観光客ら=2005年9月
北朝鮮の景勝地・金剛山に韓国人観光客を送る「金剛山観光事業」をめぐり、南北が昨年秋に事業の再開寸前まで交渉を進めたが、破談になったと複数の北朝鮮関係筋が明らかにした。米国の情報当局が北朝鮮との直接接触で核開発への意志が固いと確認し、核実験の兆候があると韓国に伝えたためだった。
南北の間では昨年8月、軍事境界線近くの地雷爆発で緊張が高まったが、同月下旬の高官会談で緩和した。北朝鮮は対話姿勢を強調。当時の韓国政府には「北が我々の政策を受け入れた」(関係者)とする声が広がった。南北は急接近し、南北離散家族の再会事業や当局者協議を実施した。
そこで、金剛山観光事業の開発企業である韓国・現代峨山の関係者らを今年1月にも訪朝させる案が持ち上がった。事業の再開を視野に入れた動きで、金正恩(キムジョンウン)第1書記(当時)が、訪朝を認める南北合意書にサインしたという。
北朝鮮は外貨の枯渇に苦しみ、1998年の開始から2008年まで約4億9千万ドル(約565億円)の収益を上げた金剛山観光事業の再開を渇望していた。08年に北朝鮮兵が韓国人観光客を射殺する事件が起きて以降、韓国人の金剛山訪問は中断されていた。
韓国政府は、情報当局者が北朝鮮と直接接触を重ねてきた米国に対し、「もう一度だけ、北の意思を確認してはどうか」と依頼。米情報当局者らは昨年9月の秋夕(旧盆)の直前、韓国の在韓米軍烏山(オサン)空軍基地から軍用機で平壌に入った。
米側に対し、北朝鮮は核開発と経済改革を同時に進める「並進路線」を堅持する考えを強調した。米国は同じ頃、咸鏡北道豊渓里(プンゲリ)の核実験場で核実験に向けた動きがあることもつかんだ。
オバマ米大統領は昨年10月16日、ワシントンでの米韓首脳会談の際、北朝鮮に核実験の兆候があると朴槿恵(パククネ)大統領に伝えた。
北朝鮮の非核化を最重要課題とする韓国側は翌11月、現代峨山関係者の訪朝方針を取り消し、北朝鮮に伝えた。12月12日には南北次官級協議も打ち切った。
当時、中国も劉雲山・共産党政…