電通の本社ビルから段ボールを運び出す厚労省の職員=11月7日、東京・汐留、時津剛撮影
広告大手の電通が社員に違法な長時間労働をさせた疑いが強まり、東京労働局などは28日にも、法人としての電通と同社幹部ら約10人を労働基準法違反の疑いで書類送検する方針を固めた。先月の強制捜査で押収した社員の勤務記録や出退勤記録などを分析した結果、複数の部署で労使で決めた時間外労働の上限を超えて社員を働かせていた疑いが強まったと判断した。
電通では昨年末、新入社員の高橋まつりさん(当時24)が長時間の過重労働が原因で自殺し、今年9月に労災が認められた。
高橋さんの労災認定を受け、東京労働局などは違法な長時間労働が全社的に常態化していた疑いがあるとみて、10月に本支社に立ち入り調査。11月には厚生労働省が本支社に強制捜査に入るなど、立件に向けた捜査が異例のスピードで進んでいた。さらに、今月23日からの3連休の間に、石井直社長を含む役員から任意で事情聴取も行ったうえで、書類送検に踏み切る方針を固めた。
電通では1991年にも入社2年目の男性社員が長時間労働で自殺し、遺族が起こした裁判で最高裁が会社側の責任を認定。2014~15年には社員に違法な長時間労働をさせたとして、本支社が相次いで是正勧告を受けていた。東京労働局などは、労務管理を担当する幹部も違法な長時間労働が常態化していた職場の実情を把握していたとみている。(千葉卓朗、河合達郎)