2005年、2本足ですっくと立つ姿で人気者になったレッサーパンダの風太(ふうた)。13歳になった今、千葉市動物公園で子どもや孫たちに囲まれて元気に暮らす。すっかりおじいさんになり、往年の美しい立ち姿はなかなか見られないと聞いていたが、飼育係の浜田昌平さん(54)がリンゴを持つと、「よっこらしょ」とでも言うようにのっそりと立ち上がった。
今回、360度カメラで撮影したのは、風太の三男クウタの妻メイメイと、双子の孫娘ゆう、ゆいの3匹。
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【フォトギャラ】風太の一族
木々に囲まれた展示施設に近づくと、3匹は木の上にいた。え? レッサーパンダって木に登るの? 浜田さんによると、レッサーパンダは天敵から身を守るために、主に樹上で生活するものらしい。
木の上の3匹は、昼寝をしていたり、こちらの様子を見下ろしていたり。浜田さんがカメラの周りに好物の竹の葉とリンゴを置くと、1匹が警戒しながら近づいて食べ始めた。しばらくすると他の2匹もカメラを囲むように食べ出した。カメラには食事中の彼らの表情がアップで映っているはずだ。よしよし、このまま撮影は順調に進むはず……だった。
360度カメラを回し始めてから約10分、すこし離れた場所で、別のビデオカメラの準備をしていた時だった。
「ガタン、ガタン」
孫娘の1匹が、カメラを固定していたベニヤ板を見つけ、鋭い爪でひっかき始めた。板をはがされて、カメラは斜面を転げ落ちて横向きに……。他の動物の世話で離れていた浜田さんが戻るまで、地面に横向きのまま30分ほど撮影を続けた(……この様子はぜひ、メイキング動画でお確かめください)。
風太は10年連れ添った妻チィチィ(15年に死亡)との間に5男3女をもうけた。風太の子ども7匹は各地の動物園に移動。孫世代は約20匹になり、ひ孫も生まれた。14年には四男コウタが南米チリに渡り、一族は世界にも進出している。(竹谷俊之)