地元猟師が鹿の解体の手本を見せる様子を熱心に見つめるツアー参加者=2016年11月26日、奈良県野迫川村
奈良女子大学(奈良市)にハンティングのサークルが立ち上がった。全国的にも珍しい大学生の「狩りガール」。狩猟の現場で野生動物に向き合い、教室では学ぶことができない「命をいただく」という意味を学んでいる。
■鹿の解体、猟師が指導
奈良県南部の野迫川村の山中で昨年11月末、県や村、同大でつくる実行委員会が主催する1泊2日の狩猟体験ツアーが開かれた。参加したのはメンバー8人と一般の男性会社員ら14人。地元猟師が案内し、動物の足跡やわなを見学してジビエ料理を作った。
あらかじめ仕留めてあった鹿の解体体験では、猟師の指導で皮を剝ぎ、肉を切り分けた。参加者から「とれる肉ってこんなに少ないんだ」と声が上がった。
サークル代表で同大大学院生の竹村優希さん(24)は猟師を手伝い、鹿防護柵などの説明をした。もともと狩猟とは無縁だったが、まちづくりをテーマに研究室の仲間と野迫川村を訪ねて興味を持った。過疎地の活性化について考える過程で、鹿が畑を荒らすなど獣害が広がる一方、猟師が減っている現状を聞いたのがきっかけとなった。
ちょうど奈良県が学生政策コンペを開催しており、狩猟文化をPRして村おこしにつなげる「女子大生ハンティングサークル(狩りガール)」を提案。最優秀賞に選ばれて事業化が決まり、県から約300万円の予算を得た。
竹村さんは早速、県の講習会に参加。ベテラン猟師がわなで捕らえたイノシシに、数人がかりでとどめを刺し、息を切らせながら皮を剝いだ。野生動物が「肉」になる瞬間に目が釘付けになった。見ているだけで疲れたという。
「お肉というエネルギーをいただくには、相応のエネルギーが必要なんだ……」。スーパーに並ぶ肉からは「命を奪っている」という行為は見えない。自然と人間のつながりを見直そうと思った。