日本と中国、韓国の3カ国による自由貿易協定(FTA)締結を目指す11回目の交渉が11日まで、北京で開かれた。懸案となっていた、関税交渉の枠組みについては今回も合意には至らなかった。国際政治状況も影を落とし、交渉は足踏みが続いている。
交渉には日本から片上慶一・外務審議官らが参加、3日間の日程で中韓側の代表者と話し合った。金融や電気通信などの分野で新たに作業部会が開かれた一方、具体的な関税率を決めるために必要な枠組みについては合意できなかった。
外務省の飯田圭哉・経済局審議官は終了後、「保護主義に対抗して交渉を進める機運は高まっている」と話し、話し合いが前進していることを強調した。
3カ国による交渉は2013年3月に始まった。東アジアの主要国がそろう「メガFTA」として期待されたが、交渉開始から4年近くを経ても実質的な進展は乏しい。
環太平洋経済連携協定(TPP)を米国とともに主導した日本は、TPPの枠組みに加わらなかった中韓にも、同様にレベルの高い自由化率を求めてきた。一方、中韓側はすぐに大幅な自由化に応じにくい国内事情がある。
交渉が停滞する間に中韓2カ国のFTAが15年に合意し、発効した。中国の巨大市場での競争を日本に対して優位に進めたい韓国にとっては、日本を入れた枠組みをすすめる動機に乏しくなっている。
追い打ちをかけるように米次期大統領に当選したトランプ氏が昨年、TPPからの離脱を表明。TPPから取り残されるとの焦りが、中韓を日本との交渉に対して前向きにしていた面もあるだけに、米国の態度変更が交渉にマイナスに働いた可能性がある。
今回、韓国は朴槿恵(パククネ)大統領を巡る疑惑による国政の混乱で、政治判断をしにくい状況にあった。中国も、「貿易面で対中強硬路線を唱えるトランプ氏の政策を見守る必要がある」(外交筋)ため、歩み寄りが難しかった模様だ。次回の交渉は日本で開かれる。(北京=斎藤徳彦)