敗戦直後に赴任先の旧満州でソ連（当時）に拘禁され、モスクワで獄死した外交官がいる。外務省が１２日に公開した外交文書で、謎に包まれていた終戦前後や晩年の様子の一端が明らかになった。部下の報告書やその後の目撃証言から、邦人保護に奮闘する姿や監獄での日々が垣間見えた。

ソ連の外交官拘禁「優秀さ故に」 佐藤優氏インタビュー

中国東北部ハルビンで総領事を務めていた宮川船夫さん。１９４５年８月９日未明、日本の傀儡（かいらい）国家・満州国で関東軍が展開する拠点に向け、日ソ中立条約を破ったソ連の攻撃が始まった。

公開文書はこう記す。

「午前３時ごろ爆撃機が飛来し浜江駅に爆弾を投下」「ソ軍は瞬く間に国境線を突破し、刻々牡丹江、哈爾浜（ハルビン）方面に進撃」「逐次日本軍の数も増加し、人心は漸次緊張の度を加えた」

文書によると、宮川さんはハルビンを「非武装都市として宣言するよう（関東）軍に要請」した。無血開城を主張したが拒まれ、１５日の無条件降伏を迎える。銀行に借金して食料品を購入し総領事官邸にこもり、官邸を仮事務所にして「在留民保護に狂奔した」という。

ソ連軍は１８日に総領事館を接収し、２１日に日本軍を武装解除した。

宮川さんは１８９０年生まれ。…