岡田節人さん
iPS細胞などの幹細胞や再生医療の源流となる研究を手がけた発生生物学の第一人者で京都大名誉教授の岡田節人(おかだ・ときんど)さんが、17日、肺炎で死去した。89歳だった。葬儀は親族のみで行う。喪主は長男暁生(あけお)さん。
兵庫県伊丹市出身。50年に京大理学部を卒業後、卵から動物の体が形作られる過程を解き明かす発生学の道に進み、欧米への留学などを経て、67年に京大教授に就任。基礎生物学研究所長、JT生命誌研究館長などを歴任した。89年に発生生物学で最も権威のあるハリソン賞を受賞し、07年には文化勲章を受けた。
岡田さんは、役割が決まった細胞でも別の種類に変わりうると考えて実験に着手。ニワトリの目の色素細胞を培養して、レンズ(水晶体)に変わることを示し、世界的な業績を挙げた。
こうした細胞の「柔軟性」が発生や体の再生で主役を担うことをつかみ、発生学に細胞という概念を先駆けて取り入れ、今の幹細胞生物学や再生医療につながる研究を切り開いた。
「岡田節人ぶし」と呼ばれたユニークな語り口で学生の人気を集め、細胞の接着分子カドヘリンを発見した理化学研究所の竹市雅俊氏ら多くの研究者を育てた。芸術にも造詣(ぞうけい)が深く、雑誌や新聞でクラシック音楽の評論も手がけた。長男暁生さんは音楽学者で京大教授。