韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦を象徴する「少女像」が設置された問題で、安倍晋三首相は19日、首相官邸で岸田文雄外相と対応を協議した。対抗措置として一時帰国中の長嶺安政・駐韓大使らの帰任は当面見送ると確認。日本側が求めている像の撤去について韓国政府の動きが鈍いまま、事態は長期化の様相を強めている。
従軍慰安婦問題
日本政府関係者によると、首相と岸田氏は「韓国側の姿勢に変化はなく、日本側がいま動く必然性はない」との意見で一致した。菅義偉官房長官は19日の記者会見で「(大使の帰任時期は)諸般の状況などを見ながら判断していきたい」と述べた。
日本政府は、韓国政府が釜山の少女像撤去に取り組まないのは、2015年末の慰安婦問題に関する日韓合意の精神に反するとの立場。外交関係に関するウィーン条約で守られている領事機関の威厳も侵害されているとしている。
事態に変化が見られず、日本側は「首相を含め、怒りを募らせている」(外務省関係者)。さらに韓国の地方議員が竹島(韓国名・独島〈トクト〉)への少女像設置に向けた募金運動を始め、状況は厳しさを増している。
9日に一時帰国した大使らの帰任時期は、12年8月に李明博(イミョンバク)大統領(当時)の竹島上陸への対抗措置として当時の駐韓大使が一時帰国した13日間を超える可能性も出てきた。外務省によると、次席公使が大使の臨時代理を務めており、邦人保護を含む実務的な業務に影響はないとしている。だが事態打開の見通しは立たず、政府関係者は「いいアイデアがあったら教えてほしい」と漏らす。(武田肇)