事故が起きた現場交差点=島根県益田市久々茂町
島根県益田市で1月30日朝、集団登校の小学生らに軽トラックが突っ込む事故があり、巻き込まれた同市の無職三原董充(ただみつ)さん(73)が31日早朝、搬送先の病院で死亡した。三原さんは34年前、当時小学2年だった次女を現場近くで起きた交通事故で亡くし、地元の子どもたちを守るため、毎朝、ボランティアで登校に付き添っていたという。
事故は30日午前7時15分ごろ、益田市久々茂(くくも)町の国道191号交差点で発生。県警益田署によると、小学生9人と三原さんが信号のない横断歩道を渡っていたところ、3年生の男児(9)と三原さんがはねられた。三原さんは全身を強く打って重傷を負い、その後容体が悪化し、急性硬膜下血腫で亡くなった。男児は軽傷を負った。
益田署は軽トラックを運転していた会社員山口伊佐男容疑者(62)=同市匹見町道川=を自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)と道路交通法違反(酒気帯び運転)の疑いで現行犯逮捕。容疑を過失運転致死に切り替えて調べている。
三原さんは地域の豊川地区子ども見守り隊のメンバー。事務局がある豊川地区振興センターの田原輝美センター長(68)とは約50年の付き合い。「70代を中心に22人いるメンバーの中でも中心的な役割。面倒見がよく、多くは語らないが、みんなに背中で行動を見せていた」と話す。
田原さんによると、三原さんの次女は1983年、現場近くでトラックにはねられて亡くなった。同じような事故が起きないように願っていたのか、三原さんは孫が小学生になった約15年前から登校時の付き添いを始めた。見送りを終えると、安全に歩けるように歩道に落ちた枝や枯れ葉を丁寧に掃除するのが日課。信号機の設置などを行政に要望したこともあった。
事故があった日は田原さんも別の場所で活動しており、事故の知らせを聞いて現場に向かうと、三原さんは救急車に運び込まれていた。三原さんは道路に倒れても、けがをした児童に「大丈夫か」と声をかけて気づかっていたという。
三原さんは地元に伝わる石見(いわみ)神楽でも活躍。若者や子どもたちの指導役として親しまれ、海外公演にも出掛けた。田原さんは「児童にとっても、石見神楽にとっても大きすぎる存在だった。残念です」と無念をにじませた。(伊藤周)