プレ大会を兼ねたノルディックスキーW杯で、選手に声援を送る観衆=4日、韓国・平昌、林敏行撮影
2018年に韓国で開かれる平昌(ピョンチャン)冬季五輪の開会式まで9日であと1年となった。施設建設や本番に備えたプレ大会は順調だが、施設の大会後の活用や維持費など、20年東京夏季五輪と同じ問題を抱えている。
「零下10度の平昌から世界に熱気を届けよう」――。今月3日から3日間、平昌では五輪のプレ大会を兼ねたノルディックスキー複合などのワールドカップ(W杯)が開かれ、計約3千人がチャンゴ(太鼓)やケンガリ(鉦(かね))にあわせて声援を送った。
韓国人にはなじみのない競技で、観客席は地元・江原(カンウォン)道庁や関連企業などの「動員」が目立った。初日には、地元住民が上げた花火のビニールが電気設備に引っかかり、停電するハプニングも。韓国選手は「一時12位」が最高。それでも勤務先の社長の指示で来たという春川(チュンチョン)市の権銀真(クォンウンジン)さん(45)は「間近に見て興味が湧いた。1年後には韓国中がお祭りのように盛り上がっているはず」と期待を込めた。
国民の関心はいま一つだ。今月、韓国の世論調査機関が成人を対象に行った全国調査では、平昌五輪に「関心がある」と答えた人は48%。「関心がない」の49%と並ぶ程度だった。
大会組織委員会は、4月まで続く各種目のプレ大会で競技運営を習熟し、機運を盛り上げる方針だ。イム・ソンジェ・海外報道支援チームマネジャーは「テストイベント(プレ大会)は改善点を探るのが目的で、最初からすべてうまくいくとは考えていない。まずは順調な滑り出しだ」と話した。
競技会場は9割近くが完成。開閉会式会場は約4割だが、9月に完成する見込みが立っている。
ただ、1998年長野冬季五輪で長野市の財政を圧迫し、20年東京夏季五輪でも懸念される五輪後の活用策への懸念は、ここでも同じだ。
競技会場12カ所を管理する江原道によれば、大会後の2カ所は運営主体も決まっていない。江陵(カンヌン)スピードスケート競技場は年間22億ウォン(約2億2千万円)の赤字と試算される。旌善(ジョンソン)アルペンスキー場は一般のスキー場としての利用価値が不明なことがネックになっているという。韓国体育大が選手育成などに使うそり競技のスライディングセンターも、年間9億ウォン(約9千万円)の赤字となる計算だ。
江原道の五輪運営局の担当者は「選手がメダルを取るための施設。国が金銭面で支援して欲しい。道だけの公費負担では住民の理解を得られない」と話す。
施設維持費の問題は当初から予想されたため、市民レベルで五輪開催への抵抗感を示す声は今もある。1998年長野冬季五輪で使われたそり競技場やソウルのアイスリンクを使う分散開催を主張してきたNGOスポーツ文化研究所幹事の李敬烈(イギョンリョル)さんは「利用が有意義になされているかを監視するため、各競技場の収支を公開させる運動をしていく」と話した。