長崎原爆で被爆した親を持つ「被爆2世」25人が20日午後、2世への援護策をとらなかった国の責任を問い、1人あたり10万円の国家賠償を求めて長崎地裁に提訴した。今月17日に被爆2世で初の集団訴訟を広島地裁に起こした「全国被爆二世団体連絡協議会」のメンバー22人に続くものだ。
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今回提訴したのは、長崎で被爆した親を持つ長崎、福岡、大阪、広島の4府県に住む協議会の25人。
被爆者援護法で、被爆者には医療費の自己負担分などが支給されるが、2世については、国は被爆の遺伝的影響を認めず、援護対象としていない。援護法とは別の措置として年1回の健康診断を実施している。
訴状で原告側は、「放射線は少量でも遺伝的に有害」とする日本遺伝学会・日本人類遺伝学会の指摘など、放射線の遺伝的影響が示されてきたにもかかわらず、「国は2世への援護策をとってこなかった」と指摘。2世を被爆者と区別する合理性は認められず「平等権を保障する憲法に違反する」と主張し、援護策の必要性を認識しながら援護法の対象を2世に拡大しなかったのは「立法の不作為」だと訴えている。
厚生労働省の原子爆弾被爆者援護対策室は「訴状が届いていないので、現時点ではコメントは差し控えたい」としている。
国は被爆2世の人数を把握していないが、協議会は全国で30万~50万人と推計。協議会会長で原告団長を務める崎山昇さん(58)は長崎市の被爆2世。「2世への援護を求めて運動してきたが、法に基づく援護につながらなかった。訴訟が立法のきっかけになるよう裁判を闘っていく」と話している。(山野健太郎)