埼玉県所沢市は20日、ふるさと納税(寄付)した人に返礼品を贈るのを4月から取りやめると発表した。寄付の受け付け自体は継続する。総務省などによると、返礼品に知恵を絞る自治体が増える中、取りやめるのは珍しいという。
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市は2008年度から寄付を受け付け、15年12月から、百貨店「そごう・西武」と提携する形での返礼を始めた。地元企業「ビクセン」の望遠鏡や地ビール、狭山茶など53種類をそろえ、15年度に378件(3765万3158円)の寄付を集めた。だが返礼品の調達費や人件費などがかかる一方、所沢市民が他自治体に寄付することで住民税などからの控除が生じ、税収としては「赤字」だったという。
今後は教育、福祉など使い道を指定して寄付を受け付け、事業に活用するという。藤本正人市長は20日、「返礼品を得るのが目的化している」と自治体間の返礼品競争を批判。「(地方創生を応援するという)基本理念は否定しない。今後は事業や企画を絞って応援してもらえるよう工夫したい」と話した。
総務省によると、15年度のふるさと納税の寄付金額は約1653億円。14年度の約4倍となった。一方、総務省は昨年4月、「資産性の高いものや高額な返礼品」などを自粛するよう通知。千葉県大多喜町では町内で使える「ふるさと感謝券」がネットで転売される例が続出し、5月末で取り扱いをやめた。京都府長岡京市も昨年9月から返礼品をやめた。高市早苗総務相は、通知後も一部の自治体が商品券などを返礼品としていることを問題視し、今春をめどに改善策をまとめる方針を明らかにしている。(戸谷明裕)