東小雪さん=東京・渋谷、時津剛撮影
3月8日は国際女性デー。レズビアンであることを公表している元タカラジェンヌの東小雪さんは「諦めず、違和感を持ち続けて」と話します。
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私が育った土地では、冠婚葬祭で親戚が集まると女性だけが立ち働き、男性は動かないのが当たり前。「なんで?」と思っても疑問を口にすることはありませんでした。それが当たり前、という空気だったから。女の子は結婚して子どもを産む――。それしか無いと思っていた。
高校2年生で自分がレズビアンだと気づいて、「結婚もできないし子どもも持てない。親不孝だ」と思ったのを鮮明に覚えています。
LGBTの活動をするようになってフェミニズムに出会い、「男の人も女の人も平等なんだ。世の中には女性差別があるんだ」と知りました。差別のある環境で育ったのに、染みついていたから分からなかった。学ぶ中で言葉を見つけたことが、生きる力になったと思います。
私は13年にパートナーと結婚式をあげました。レズビアンであることをカミングアウトする前は、セクハラは日常茶飯事。嫌だなぁと思っても仕事だから苦笑いしてやり過ごしていました。パートナーと会社を立ち上げたのも、セクハラに遭いたくないから、と言っても過言ではない。
カミングアウトしていない友達は、いまでもそういう発言に傷ついている。女性としてセクハラにあうし、レズビアンとして「ホモネタ」のハラスメントにもあう。二重の生きづらさがあると思う。
それでも、LGBTを取り巻く環境はこの5年ほどで大きく変わりました。それに比べて女性を取り巻く環境は、どうなんでしょう。ジェンダーギャップ指数も落ちています。
女性には「結婚しなきゃ」とか「子どもを産まなきゃ」といったような縛りがたくさんあるように思う。異性愛の女性から「レズビアンカップルは自由でいいね」と言われることもあります。結婚も出産も含めて、多様な生き方があることを知ってもらえたらな、って思います。
本を読んだりつらいことを経験したりする中で「もやもやの答えはここにあったんだ」と感じ、生きやすくなった。だから、もやもやを感じている女の子たちも「仕方がない」と諦めず、違和感を持ち続けてほしい。
女性が働きづらいのも、同性婚ができないのも、性被害にあうのも、仕方がないことではないのだから。
社会や法律は必ず良くなっていくと思う。でも、今はまだ、普通に生きていきたいと思ったら闘わないといけない環境がある。いつも全力で闘わなくてもいいから、声を上げられるときには上げてほしい。諦めないことが大事だと思います。
私は小さい頃、父親から性虐待を受けていました。でも記憶にふたをしていたので覚えていなかった。23~24歳ごろは、うつで苦しみました。動悸(どうき)がしたり悪夢を見たりして眠れない日々が続くのに、理由が分からない。お薬を飲むとますます精神状態が悪くなるので、本当につらかったですね。周囲は「死なないで」と言うけど、「1分1秒、生きているのがこんなにつらいのに、どうやって生きればいいの?」と感じていた。
カウンセリングを受け、性虐待に遭っていた記憶を取り戻しました。パートナーに支えられて治療を受け、カオスのような日々から回復して、いまは生きていて幸せです。いま、苦しんでいる人は、どんなに絶望的な状況であっても、死なないでほしい。
2014年に実名で被害を告白した本を出しました。反響はすごかった。講演に行くと「私も被害を受けていた」とか「あれは性被害だと言っていいんだ」という方がたくさんいらっしゃる。
性暴力は、被害者の生きる力さえ奪ってしまう暴力なので、被害者が訴えていくのはすごく大変なことです。さらに、男性中心社会の中でタブー視されがちです。実際に被害がたくさん起こっていることを知ってもらわないと、と思うし、被害者には「あなたは悪くないよ」と伝えたい。(聞き手・山本奈朱香)
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1985年生まれ。元タカラジェンヌ。LGBTアクティビストとして講演や企業研修を行っている。東京ディズニーシーで初の同性結婚式を挙げ話題になった。著書に「なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白」「同性婚のリアル」「ふたりのママから、きみたちへ」などがある。