元ライブドア社長の平松庚三さん。週の半分を古民家で過ごす=群馬県みなかみ町
11年前、ライブドアの粉飾決算事件で、堀江貴文社長(当時)ら幹部の逮捕後、急きょ後任の社長を引き受けた平松庚三(こうぞう)さん(71)はいま、群馬県で農業をするかたわら、経営者としてビジネスの最前線に立つ。珍しい「半農半ビジネス」の人生を送ることにしたのは、実は難病を患ったからだった。
初めて身体に異常を感じたのは2006年6月、社長として臨んだライブドアの株主総会だった。「金返せ」。怒号のなか7時間も立ちっ放し。後頭部が痛み出し、左手がしびれた。
その5カ月前の1月、東京地検特捜部が六本木ヒルズのライブドアを捜索。目を赤くした堀江社長から「万一のことがあったら」と突然、社長就任を打診された。平松さんは幹部の中で最年長のうえ、04年にライブドアに買収されたソフトウェア会社出身で粉飾決算とは関係がない。そこが買われたようだった。
就任以来、頭を下げ続け、強烈なストレスの日々。背中は鉄板のように固まった。中でもライブドア株を買い占め、会社を解体して現金の分配を狙う海外ファンドの対応に苦しんだ。弁が立つ彼らとの交渉は一筋縄ではいかない。「馬鹿野郎」と叫びたいのをこらえ、「その大きな口を閉めていただけませんか」と英語で皮肉るのがやっと。それでも興奮して横隔膜がひくひくした。
退任後の09年2月、米カリフォルニア州のモハベ砂漠にいた平松さんを再び異変が襲う。宇宙旅行に申し込み、訓練を見学するイベントに参加した時、砂が目に入った気がした。水ですすいでも違和感は消えない。やがて、しびれは顔や指に及んだ。
帰国後、近所の医師は脳梗塞(…