日馬富士(手前)ははたき込みで蒼国来に敗れる=豊間根功智撮影
(14日、大相撲春場所3日目)
もう33歳になる。やっとの思いで自己最高位の前頭2枚目まで上ってきた。「今年は勝負の年。いい相撲を取りきりたい」「1度は三役になってみたい」。最近、こう口にする蒼国来の執念が呼んだ初金星、といってよかった。
日馬富士が2敗目 大相撲春場所3日目
どすこいタイムズ
初めての結びの一番。動きが硬い。防戦一方というか、日馬富士に攻められ、揺さぶられ続けた。のどわで起こされ、何とかいなす。頭を押さえつけられて引っ張り込まれ……。
「勝った感じがしない」と振り返るのも無理はない。押されるに任せて土俵伝いに後退したが、最後の最後、両足が俵にかかっていた。「よく残ったなと思う」。夢中で大逆転のはたき込み。横綱を頭からダイビングさせた。
「コツコツやってきたことが、こんなことにつながるんだな」。蒼国来にとって、この感慨はひとしおだろう。角界から1度、追い出されている。2011年4月。八百長に関わったとして日本相撲協会から引退を勧告されたが応じず、解雇された。裁判に訴え、協会の処分無効が認められたのは4年前の3月だった。
「思い出したくない」というブランクの約2年間は筋力トレーニングに励み、四股を踏み続けていたという。中国出身のこの力士の胸には、相撲を取れる喜びがふつふつと湧いている。「自分の人生で今が一番いいかもしれないですね」。うれし涙なんて流さない。からっとさわやかな表情だった。(隈部康弘)
■手負いの日馬富士「足がついてこなかった」
鼻歌まじりに風呂を出た日馬富士。自席で腰を下ろし、歌をやめると、大きなため息が漏れた。早くも2敗目。初場所で途中休場の原因となった右太もも痛は癒えておらず、この日も「足がついてこなかった」。苦しい土俵が続くが、「切り替えて、しっかりやっていきたい」。
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●宇良 連敗で黒星先行。地元大阪での新入幕の土俵は「毎日緊張しているし、今日も緊張した。まだ3日目ですから」。
○白鵬 豪風を寄り切る。「一瞬投げようと思ったけど、かわいそうだから。37歳ですし」と幕内最高齢を思いやる。
●琴奨菊 大関復帰をかける場所で初黒星。「勝負だから仕方ない。気持ちを切り替えて」と言いつつも「悔しいねー」と本音。
●松鳳山 3連敗。「いい時も悪い時もある。いい時ばっかりだったら横綱になっちゃうよ」と冗談をとばす。
○照ノ富士 カド番で3連勝スタート。ここ2日、取組後に摂取するドリンクを飲ませていた記者が見当たらず、「どこ行ったの? ゲン担ぎなのに」。
○鶴竜 4横綱で最初に土俵に上がり、3連勝。「早く帰れるね。いいじゃないですか」
●豪風 初日から横綱戦3連敗。「攻めたんですけどね。気持ちを切らさずに、目いっぱいやる」。4日目は日馬富士戦。
○稀勢の里 攻められても慌てない、連日の横綱相撲。「うん、いいんじゃないですか?」
○高安 大関を目指す関脇は琴奨菊を破り3連勝。「投げが決まってよかった。大事な相撲が続く。しっかり(白星を)重ねたい」
○正代 1横綱1大関を撃破。「体は動いている。いつ崩れるか分からないので、気を抜かないようにしたい」
○宝富士 初日から3連勝は2012年夏場所以来。「(久しぶりで)それはそれで恥ずかしい」