「洛中洛外図屛風」のデジタル複製作品。これを専用シアターに映し出す=京都市東山区、佐藤慈子撮影
京都市に4月に移転する京都美術工芸大(京都府南丹市)が市と連携して、デジタル技術で複製された文化財を使って観光に役立てる取り組みを始める。使用するのは、江戸初期の京都を描いた「池田本 洛中洛外図屛風(びょうぶ)」(国重要文化財)。デジタル複製した作品をキャンパス内の専用シアターに映し出し、歴史や名所を学べるようにする。
各地の寺社や博物館は近年、屛風やふすま絵の複製作品を、実物の代わりに展示している。実物は博物館などに預けることが多い。今回は、これまでのような複製の展示を「見る文化財」から、京都の昔の街並みや人々の生活を知り現在と比較できる「観光に役立つ文化財」へとする試みで、全国的にも珍しいという。
洛中洛外図屛風は、織田信長が上杉謙信に贈ったとされる上杉本や、江戸初期に絵師・岩佐又兵衛が手がけた舟木本(ともに国宝)など数多く描かれた。
京都美術工芸大に展示される池田本は、江戸初期の御所や二条城、祇園祭の庶民らの生活が描かれている。その数は約3100人に及び、洛中洛外図屛風のなかで最多クラスとされる。岡山藩主の池田家に伝わり、林原美術館(岡山市)が所蔵。2015年にデジタル化された。
大学は4月、多くの観光客が訪れる京都市東山区の三十三間堂や京都国立博物館のそばの旧小学校跡地に移転。現・園部キャンパス(南丹市)でも一部の授業をする。京都市の新しい東山キャンパス(敷地面積約8100平方メートル)では、観光客らも出入りできる1階ギャラリーにデジタル複製された実物大の屛風を置く。
ギャラリーの隣にはシアタールームを作り、高さ1メートル、幅1・85メートルのタッチパネルを設ける。高繊細な4Kで池田本を映し出す。たとえば清水寺を指で触れると拡大表示され、清水寺の歴史など説明文が表示される。若い年代にも分かってもらえるように、文章はツイッターほどの長さにするという。
市プロジェクト推進室の山下聡…