化学兵器とみられる攻撃後、双子を抱きしめるアブドルハミド・ユセフさん(親族提供)
米国のトランプ大統領がシリア・アサド政権軍へのミサイル攻撃に踏み切ったのは、同政権軍が反体制派支配地域で化学兵器を使った疑いが浮上したためだ。化学兵器が使用されたとされる4日朝、北西部イドリブ県の現場では何が起きていたのか。被害を受けた住民が、トルコで当時の状況を証言した。(トルコ南部イスケンデルン=渡辺丘)
米、シリアにトマホーク59発 化学兵器と断定し報復
4日午前6時半すぎ、シリア北西部イドリブ県の南部ハーン・シェイフン。生後9カ月の双子の父親で、農業アブドルハミド・ユセフさん(29)は、爆撃があった場所から約20メートル離れた自宅にいた。地震のように家が揺れた。妻のダラルさん(24)と双子のアフマド君、アヤちゃんを連れて屋外に出ると、2度、爆発音が響いた。数分後、約50メートル前の路上で住民が次々に倒れた。
双子を妻に預けて助けに向かうと、20~30人が口や鼻から泡を出していた。「化学兵器だ」と叫ぶ人もいた。近くにある兄弟の家に向かうと、兄弟の妻が顔をスカーフで覆った状態で亡くなっていた。有毒ガスから身を守ろうとしたのかと思った。
ユセフさんもめまいがし、気を失った。その6時間後、搬送された地元の病院で目覚め、妻と双子を含む親族25人が亡くなったと知らされた。
4日は2度目の結婚記念日だった。「子どもたちは甘えん坊で、畑に行くときはいつも私の肩に乗り、しがみついていた。私だけが生き残り、とてもつらい」と声を振り絞った。