演説を終え有権者の声援に応えるマクロン氏=1日午後6時38分、フランス・パリ、杉本康弘撮影
7日のフランス大統領選の決選投票で争うマクロン前経済相と、右翼・国民戦線(FN)のルペン氏はメーデーの1日、それぞれパリやその郊外で大規模な集会を開いた。経済政策などで立場が大きく異なる両候補は、互いに相手を「反フランスだ」と激しく批判。ルペン氏から「エリートの代表」と呼ばれるマクロン氏が反撃に出た。
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ルペン氏は、パリ郊外での集会で「我々の敵は、マクロンという名の金融界だ」と訴えた。投資銀行出身で自由競争を重視するマクロン氏が特権的な立場にあると批判する一方、「私は中小企業を支える。労働者の声に耳を傾ける」と呼びかけた。
パリ市内で集会を開いたマクロン氏は「(メーデーの)デモ行進をした働く人たちをたたえたい。労働者の権利を守ることは我々の戦いである」と訴え、労働者に寄り添う姿勢を見せた。欧州連合(EU)の離脱を問う国民投票の実施も掲げるルペン氏に対し、「EUを離れると働く人たちの貧困につながる」として、EUとの関係強化の必要性を強調。国外移転する工場からの輸入品に多額の税金を課すなどの保護主義を訴えるルペン氏が当選すれば、「フランスは孤立してしまう」と訴えた。
マクロン氏はまた、「私は政策面だけではなく、民主主義とは何かという点においても最後までルペン氏の考えとたたかう」と述べた。演説に先立つ1日午前には、1995年の同じ日に行われた当時のFNの行進の最中、モロッコ出身の男性が参加者にセーヌ川に投げ落とされ水死した事件の現場を遺族とともに訪れ、献花した。厳しい移民規制を主張するFNの排外主義的な過去を強調する狙いがあったと見られる。
1日には、労組など主催のメーデー・集会も仏各地で開かれた。パリではルペン氏の決選投票進出に危機感を持つ多くの市民が参加。約3万人が「ルペンにノン」「我々はみんな移民の子だ」などとスローガンを掲げ、デモ行進した。
ルペン氏の父ジャンマリ・ルペン氏(88)が大統領選の決選投票に進出した2002年のメーデーにはFNを批判する約40万人が集まったが、この日はルペン氏とマクロン氏の両方を批判するプラカードも。一部の若者が火炎ビンを投げ、警察官にけが人が出た。(パリ=寺西和男、青田秀樹)