「街こおりやま」の最終号を手にする編集長の伊藤和さん=福島県郡山市
福島県の経済をリードする郡山市で、情報を発信してきた月刊タウン誌「街こおりやま」。震災時も休まず42年間続いたが、4月の504号を最後に終刊した。創刊時から携わる編集長の伊藤和(かず)さん(74)は「これからも『自分たちの街を愛そうよ』と呼びかけていく」と話す。
ポケットに入るB6判、全64ページのタウン誌が創刊されたのは1975年5月。最近の発行部数は月1万2千部で、定価の300円は92年に1度値上げしただけだ。
定番企画は交通事故撲滅、うまいもの談議など硬軟のテーマを織り交ぜた座談会。市民10人が顔写真付きで登場し、「最後の晩餐(ばんさん)は何を?」「好きな寿司(すし)ネタは?」などに答える3分インタビューも好評だった。
一方、行動するタウン誌を目指した。
江戸時代から続く地元の柳橋歌舞伎を支えるため、バスを仕立てて読者と見に行く「守る会」を結成した。隠れた人材をたたえる「ふるさと大賞」を創設し、1人で川のごみ拾いを続ける男性や郡山芸妓(げいぎ)組合など28の個人・団体を表彰してきた。
「発刊以来最大の危機」だったのが、東日本大震災。印刷機は故障し、当初は紙が届くメドも立たなかった。だが、津波に襲われた沿岸部に偏りがちなマスコミを横目に、「こんな時こそタウン誌の出番。数ページでも発行日が遅れても何が何でも出そう」と自転車で被災現場を回って写真を撮り、スーパーの開店状況や学校、避難所の様子など細かな生活情報をかき集めた。「震災特集」に切り替えた4月号はぎりぎりで間に合った。
活字文化の陰りも感じていた。…