出版取次会社「トーハン」(東京)が、週刊新潮(新潮社)の中づり広告をライバル誌である週刊文春(文芸春秋)側に渡していたことが、トーハンへの取材でわかった。中づり広告は、発売される週刊誌の掲載内容を一覧で示したもの。同社は「他社に関する情報なので配慮すべきだった」として、今後は取りやめることを検討している。
中づり広告は、鉄道車両内に掲示されるほか、トーハンなどを通じて全国の書店にも配布される。
トーハンによると、文芸春秋の社員が定期的にトーハンを訪れ、新潮の中づり広告を借りていたという。始まった時期などは調査中だという。トーハンの広報担当者は中づり広告について「秘密保持の規定がなく、仕入れ部数交渉のための販促資料という認識だった」と説明。「他社に関する情報なので配慮すべきだった」としている。
新潮社によると、新潮の中づり広告の締め切りは、週刊誌本体の締め切りより1日早い。新潮と文春の発売日はほぼ同じで、文春側が新潮の中づり広告を記事作成に使っていた可能性があるとみて調査していたという。新潮社は朝日新聞の取材に対して「驚きを禁じ得ないとともに、残念というほかありません。流通に携わる関係各社に協力を求め、真相を明らかにすべく調査を続けてまいります」とコメントを出した。
一方、文芸春秋は取材に対し「情報収集の過程はお答えしておりません。情報を不正あるいは不法に入手したり、それをもって記事を書き換えたり、盗用したなどの事実は一切ありません」と文書で回答した。