世界130カ国以上の代表団を集めて開かれた中国主導の「シルクロード経済圏構想」(一帯一路)の国際会議で、中国が示した貿易に関する文書について、欧州連合(EU)の複数の国が支持しなかったことが16日までに分かった。中国は会議を「大成功」とアピールしているが、インドが参加を拒否するなど、中国主導の貿易や経済協力への警戒感もあらわになった。
一帯一路国際会議、声明採択し閉幕 習氏「成果出せた」
会議は15日まで2日間開かれ、最終日には共同声明を採択。習近平(シーチンピン)国家主席は閉幕式で「友好的な雰囲気のなか率直に意見交換し、多くの素晴らしい意見が出た」と語っていた。
しかし、AFP通信などによると、貿易に関する分科会に参加したドイツ、エストニア、ハンガリーなどのEU加盟国が文書への署名を拒否。物資調達の透明性や環境基準への懸念について、中国側から十分な説明がなかったためという。中国側は数日前に文書を示し、「修正はできない」と説明していたという。
北京にあるEU代表部の担当者も朝日新聞の取材に「EUは最終的に文書を支持しなかった。回ってくるのが遅く、交渉の時間がなかった」と説明した。
中国外務省の華春瑩副報道局長は16日の会見で「貿易協力の提案文書は宣誓のようなもので、意欲のある国が参加する。十分な協議を経て、多くの国の支持を得た」とだけ説明した。
一方、インド政府は「国家主権と領土保全への懸念を無視した計画を受け入れる国は一つもない」と反発し、明確に会議への参加を拒絶した。パキスタンと領有権を争うカシミール地方が、一帯一路の事業「中パ経済回廊」の対象に含まれたためだ。中国によるパキスタンやネパールなど周辺国への投資攻勢に危機感を抱いているとみられる。
中国外務省の華副報道局長は「習主席は和平の道を建設し、各国は主権や領土を尊重すべきだと訴えた。インドの懸念には明確に応えた」と反論した。(北京=延与光貞、ニューデリー=奈良部健)