見つかった「化城喩品」(手前)と「法師功徳品」(奥)。経文の内容を表した絵が金泥で描かれている=17日午後、名古屋市東区の徳川美術館、小川智撮影
3代将軍徳川家光の十七回忌のために作られた法華経33巻のうち、所在不明だった2巻が見つかったと徳川美術館(名古屋市東区)が17日発表した。金を使った豪華な経典。同館で開催中の特別展「金と銀の国 ジパング」で18~28日に一般公開される。
発見されたのは僧侶・俊海筆の「化城喩品(けじょうゆほん)」と公家・園基福(そのもとよし)筆の「法師功徳品(ほっしくどくほん)」。法華経は4代家綱の時代に作られ、栃木・日光に奉納されたが、明治期の混乱で流出。一部は大阪青山歴史文学博物館(兵庫県川西市)が所蔵しているが、残りはどこにどれだけ流出したかも不明だ。
今回の特別展をきっかけに、愛知県内の女性が「葵(あおい)の紋が付いたお経を持っている」と美術館に連絡。調査の結果、うち1巻が基福の筆跡であることなどから不明だった法華経とわかり、寄託された。
経典は1巻ずつ、当時の一流文化人の手で書かれた。経文は紺色の紙に金泥で書かれ、見返し部分も金泥で釈迦と弟子たちが描かれている。巻物の軸に水晶を使い、先の部分を葵をかたどった金具で飾ってある。徳川美術館の原史彦学芸部長代理は「保存状態が良く、本来の状態で残っている。徳川家の権威と財力を見せつけた豪華なもので、文化財的価値も高い」と話している。(千葉恵理子)