ドリブルで攻め込む川崎の辻⑭
19日から準決勝が始まるBリーグの初代王者を決めるチャンピオンシップ(CS)に、雪辱をかける男がいる。日本代表にも名を連ねる川崎(中地区1位)のシューター・辻直人だ。川崎の前身である東芝神奈川は昨季、NBL最後の覇者となったが、昨年9月のBリーグ開幕戦の舞台は、A東京(東地区2位)に奪われた。その因縁の相手と19日から始まるCS準決勝で対戦する。いまだに引きずる悔しさを、ライバルにぶつける。
3月末に東京都内であったCSの開催概要発表の記者会見。リーグで一番早くCS進出を決めた川崎から、辻がサプライズで登場した。報道陣からの「ライバルをあえて1チーム挙げるなら」という質問に、ちょっと迷って「A東京」と回答。隣にいる大河正明チェアマンへの配慮か、少し言葉を選びつつ、「開幕戦の琉球の相手は、本当は川崎なんじゃないかなと根に持っているので」と明かした。
旧2リーグの「頂上決戦」をうたった開幕戦は、bjリーグ最後の王者で最多4度の優勝を果たした琉球と、昨季のNBLレギュラーシーズン最高勝率だったA東京のカードだった。「頂上決戦」ならNBLの代表はプレーオフの末に優勝した川崎だったのでは――という思いが辻からは消えない。9千人超の観客が見守り、地上波でも生中継されるなか、床に敷かれたLEDビジョンに映し出された輝くコートの上で行われた開幕戦は、選手誰もが立ちたかった舞台だ。
「A東京はBリーグ一のビッグクラブですから」。川崎の北卓也監督は、開幕戦に選ばれたのが旧トヨタ自動車東京のA東京だったことに理解を示しつつも、「負けたくないという気持ちが一段と増したんじゃないかな」と辻ら川崎の選手の気持ちを推し量る。
A東京は1948年、川崎は50年創部の名門だ。全日本総合選手権はA東京が2度、川崎が3度制している。今季のレギュラーシーズンは1勝1敗。1月の全日本総合選手権準決勝では川崎が78―71で勝った。辻は18日の練習後、「力は拮抗(きっこう)している。ライバルです」と話した。開幕戦での「うらみ」は「結構時間が経ったので」と封印。「目の前の2試合を勝てば決勝。今はそれだけを考えて戦いたい」と誓う。(伊木緑)