山口県で採れた日本の「サザエ」。とげが長く、1列に並んでいる(岡山大の福田宏准教授提供)
国内でおなじみの貝「サザエ」は実は学名がない「新種」だったことを岡山大の研究者が突き止め、19日発表した。18世紀に欧州の学者が残したスケッチと記述をもとに付いた名が使われていたが、これが実は中国産サザエだったという。新学名は「サザエ」になった。
サザエは日本、韓国沿岸の種と、中国南部沿岸の種に大別され、とげの長さや並び方など外見で容易に見分けられる。日本のサザエはこれまで1786年に英国の博物学者が付けた「トゥルボ・コーヌトス」とされていた。しかし、岡山大の福田宏准教授(貝類分類学)が原典をインターネットで調べたところ、そのスケッチは明らかに中国産の特徴を備え、産地も「中国」と書かれていた。
以降、1995年までにサザエについて記されたほぼ全ての文献を精査、日本沿岸のサザエには正式な学名がないことを論証した。
名前がなかった背景には①持ち帰られた標本を中心に研究された②当時日本は江戸時代で鎖国をしており、日本のサザエが欧州人に入手困難だった③ネットが普及するまでは古い文献の閲覧が非常に難しかった、ことなどがあるという。
福田さんは日本沿岸のサザエを「トゥルボ・サザエ」と命名。16日、国際学術誌に掲載されて正式名になった。「こんな身近な貝に名前がなかったとは思わなかった」と驚いている。(中村通子)