28日、英中部マンチェスターで開かれたマラソン大会では、テロ事件被害者への追悼を示す黄色いリボンをつけて走る参加者もいた=河原田慎一撮影
英中部マンチェスターのコンサート会場で少女ら22人が死亡し、60人以上が負傷した自爆テロ事件から29日で1週間。捜査が続く中、事件は6月8日投開票の英国総選挙にも波紋を広げる。一方、地域に住むイスラム教徒は、憎しみをぶつけられることを恐れる。(マンチェスター=河原田慎一、渡辺志帆)
28日、マンチェスター市内でマラソン大会が開かれた。武装警官が警備する中、約3万人(主催者発表)が参加した。会場には「警察や市当局の警備で我々は安全です」とのアナウンスが流れた。
スタート前、参加者はテロの犠牲者に黙禱(もくとう)を捧げた。また地元出身のロックバンド「オアシス」の代表曲で、事件後に「連帯」の象徴となっている「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」を歌った。「怒りをもって振り返るな」という歌詞に涙ぐむ人もいた。
犠牲者への追悼や被害者への共感を示す「黄色いリボン」をつける人も目立った。リボンを胸につけたルイーズ・リギーニさん(35)は「みんなが被害者に寄り添い、団結している。卑劣なテロ事件に対し『私たちは強い』という思いを示したい」。初めて参加したシオン・ヘルバートさん(31)は「安全性は心配していない。多くの人が安全を守っているから、テロ事件後でも今日のイベントを開けた」と話した。
総選挙に向けて再開された選挙戦でも、テロは争点となっている。最大野党・労働党のコービン党首は26日、事件後の最初の演説で、「テロとの戦いは、うまくいっていない」と政府を批判。外国の紛争への武力介入がテロにつながったと示唆した上で、1万人の警察官増員などの治安対策強化を掲げた。
一方、与党・保守党を率いるメイ首相は、イスラム過激派問題などに取り組む委員会を、政府内に新たに創設すると発表した。
YouGov社の最新の世論調査では、与党・保守党の支持率は1週間前より1ポイント減り43%、労働党は3ポイント増えて38%。5ポイント差だ。5月初めには保守党の支持率が5割に迫り、3割程度の労働党に対して大きくリードしていたのに比べると差は縮まっている。事件の影響は定かではないが、ガーディアン紙は「テロは保守党の支持拡大につながっていない」と報じた。
実行犯サルマン・アベディ容疑…