力投する立大の手塚周。東京六大学春季リーグ戦で3勝をあげた 5日に開幕する全日本大学野球選手権に、立大(東京六大学)が51年ぶりに出場する。35季ぶりに優勝した春季リーグ戦では、甲子園で活躍した選手だけでなく、高校時代無名だった選手も奮闘した。その一人が手塚周投手(2年、福島)。1浪して一般入試で入った21歳の右腕はチームトップタイの3勝を挙げた。 手塚は福島県双葉町出身。浪江町に住んでいた2011年に東日本大震災で被災し、家族で福島市に避難した。福島高3年の夏は地方大会3回戦で敗れた。 「六大学で野球がしたい」と浪人した。浪人中は寮生活でキャッチボールができず、ランニングをこなして体力維持に努めた。投球練習ができない不安はあったが、「(高校時代酷使した)右ヒジや肩を痛めていたしちょうどいい」と前向きに考えた。 1浪して一般入試で立大に合格すると、昨秋は救援で4試合に登板した。リーグ通算22勝の沢田(オリックス)や田村(西武)らが抜けた今季、チャンスをつかんだ。 初先発は4月16日の法大2回戦。スプリットを効果的に使い、散発4安打2失点で完投勝ちした。「昨秋は無心だったのが、春は打者を見て、自分をコントロールしながら投げられている」と溝口監督も認める成長ぶりだった。 優勝争い大詰めの第7週の明大戦。前週の早大戦に続き、連投でチームを救った。敗れた1回戦は救援で2回無失点。負ければ優勝が絶望的になる2回戦は、先発のマウンドへ立つ。「チームの思いを背負って、最初の打者でつぶれてもいいという思いで飛ばした」「リーグ戦中も走り込んできた。連投ももちろんいけた」。8回2失点で勝ち、3回戦のサヨナラ勝ちへ勢いをもたらした。 4番笠松悠哉(4年、大阪桐蔭)や同学年のエース田中誠也(大阪桐蔭)ら甲子園で活躍したチームメートは「成長する上で欠かせない存在」という。「ここぞという大事な場面がわかっている。試合を読む力、試合の中での緩急。高校まではなかったこと」と刺激を受ける。「チーム力」を掲げ、優勝した今季。切磋琢磨(せっさたくま)できる環境が、手塚を強くした。(大坂尚子) |
被災地から1浪した右腕、憧れの六大学で躍動
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