4日、警察がロンドン橋のテロ事件を受けて家宅捜索に入ったとされる公営住宅(奥の白い建物)=ロンドン東部バーキング、高野遼撮影
多くの人出でにぎわうロンドンの観光名所で、再び無差別テロが起きた。2カ月あまりで3件のテロに見舞われた英国。メイ首相は対テロ戦略の見直しを表明したが、再発防止の徹底は難しいのが実情だ。
ロンドン橋テロ、容疑者12人拘束 複数箇所で家宅捜索
「ロンドン橋で、車が歩行者をはねている」
ロンドン警視庁に通報が入り始めたのは、3日午後10時8分(日本時間4日午前6時8分)だった。
英メディアが伝えた目撃情報によると、大手レンタカー会社のものとみられる白いバンが、時速80キロほどでロンドン橋を南方向へ暴走し、通行人5、6人をはねた。橋の南端からさらに約100メートルの地点で対向車線側の歩道に突っ込んで止まると、バンから実行犯3人が飛び降り、テムズ川南岸の食材市場「バラマーケット」付近で通行人らを刃物で次々に襲い始めた。
ロンドン橋近くで自ら営むレストランの厨房(ちゅうぼう)にいたマーク・ステンブリッジさん(54)は、騒がしさに気づき、客席に目をやった。テラス席で食事を楽しんでいた客が、叫び声を上げながら、次々と店内になだれ込んでいた。
外を見ると、ロンドン橋から続く階段を駆け下りてくる3人組の男が見えた。黒っぽい服で、3人とも片手に巨大なナイフを携えていた。ナイフは刃渡り30センチ以上の軍事用に見えた。男たちが叫ぶ英語には、なまりがあるように感じた。男たちは店へ向かってきたが、一瞬ためらったようなそぶりを見せると、別のパブの方へ向かっていった。
店内で、100人以上の客とスタッフが1時間近く息を潜めた。ステンブリッジさんは「私の店は橋から一番近い。真っ先に襲われてもおかしくなかった。テロが頻発する中、繁華街のバラマーケットが襲われることに驚きはない。ここで現実とともに生きていくしかない」と話した。
バラマーケット近くのパブで友人と酒を飲んでいたソフトウェアデザイナーのアイリーン・スミスさん(32)は、店内の客が窓際に押し寄せるのを見て異変に気づいた。「ケンカだろうか」と思ったが、客は出口に殺到し、一斉に店を飛び出していく。慌てて外を見ると、警官が叫んでいた。「早く逃げて。助かるために逃げて」
スミスさんも荷物を置き去りにしたまま外に出て、200メートルほど南の地下鉄駅まで走って避難した。はぐれた友人を捜す人や、「人が刺されるところを見た」と泣き崩れる女性もいた。
実行犯の男3人は人々を襲った後、駆けつけた警官に射殺された。最初の通報からわずか8分後だった。
男らが射殺された現場から50…