「分かりやすい解説を心がけたい」という伊達公子さん テニスの4大大会第3戦、ウィンブルドン選手権が2日に開幕する。伝統の芝コートを制するのは誰か――。日本の女子テニスを長らく牽引(けんいん)し、昨秋引退したばかりの伊達公子さん(47)に見どころを聞いた。(富山正浩) ――芝といえば、男子はロジャー・フェデラー(スイス)が圧倒的に強い。どうしたら彼に勝つことができるか? 全仏オープンでは、どうやったら(赤土が得意な)ラファエル・ナダル(スペイン)を止められるかという話題で持ちきりだった。芝になればフェデラーという存在が強い。経験の差が大きいのかなと思う。フェデラーと比べ、どっちがスピードやパワーがあるかといったら、ドミニク・ティエム(オーストリア)やアレクサンダー・ズベレフ(独)の方がある。でも、フェデラーが勝つ理由は何かと言えば、取るべきポイントを見極めて、そこを逃さない力。経験だと思う。そこに対する嗅覚(きゅうかく)と、取り切るだけの強い意志が、並外れているということに尽きると思う。 ――ナダルとティエムの顔合わせになった全仏決勝は、一方的な展開になった 決勝って独特の緊張感や雰囲気がある。場数を踏んだ選手が緊張しないかといえば、そうではない。けれど、ナダルやフェデラーは、その中で、どうしたら自分のパフォーマンスが上がるかという術(すべ)を知っている。(緊張している自分を)どうハンドリングするかというのがうまい。 フェデラー対「次世代」は? ――ウィンブルドンで頂点に立つのはやはりフェデラー? 「次世代」といわれるズベレフら若手のレベルも高い。いつ、どういう形で、フェデラーやナダルとの逆転現象が起きてもおかしくない。そこが一つの見どころになる。 ――打倒フェデラーの候補はティエムやズベレフ? そうですね。ただ、芝となると、長身のマリン・チリッチ(クロアチア)の長身から繰り出すサーブは芝で生きると思う。フアンマルティン・デルポトロ(アルゼンチン)もそう。彼らは上位に食い込んでくる可能性がある。 ――錦織圭(日清食品)はどうか? わずかなことだけど、けがからの復帰というのは、ショットのフィーリングとか、選択で迷いが出る。自分のイメージと一致するには時間が必要。全仏でも、試合をしながら勝ち上がっていくうちに自信が取り戻せた。ウィンブルドンが始まるまでに、(自分のイメージと動きの差が)縮まっているはず。ウィンブルドンでは天候に左右されたり、中断が起こりやすかったりするけど、取りこぼしなく2週目までは行ってほしい。 ――女子は、ペトラ・クビトバ(チェコ)やガルビネ・ムグルサ(スペイン)あたりが優勝候補? 一気に主導権を握れるというところでは、シモナ・ハレプ(ルーマニア)、キャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)たちも。サーブ力と主導権を譲らない強さがあり、フォアハンドの一発も持っている。クビトバは左利きというのも、試合の組み立てが難しい芝には有利。 ――大坂なおみ(日清食品)に注目すべき部分は 彼女はビッグサーバーで、強烈なフォアハンドもある。力があるだけに、楽に勝てる試合をスムーズに勝つ方法を覚えていくと、2週目も簡単に視界に入ってくる。そうなると、対戦相手に対しても、もっと脅威的な存在に映るのではないかと思う。 芝は女子にもチャンス? ――経験がものをいう芝コートだが、女子はチャンスが転がっている? 男子に比べると。とはいえ、芝だからこそ、主導権を握った者が強い。フットワークどうこうとか、試合の組み立てがどうこうよりも、一発がある方が強い。そこで、大坂選手の良さが生きる。弱い部分を出さず、勝ちきるテニスができるのでは。 ――大坂選手の上位進出の期待は? こればかりは組み合わせにもよる。彼女は世界ランク上位の選手に強いので、中堅どころの相手にどう勝っていくかというのが鍵。ドロー運にも左右されるので、序盤を抜ければかなり可能性が広がると思う。取りこぼしというよりは、1週目の後半からどうギアを上げていき、2週目に突入するかが大事。 ――このところ、女子ダブルスで日本勢が好成績を残している シングルスはすべて1人で完結するが、ダブルスってパートナーがいてのもの。相方の調子が良い時もあれば、悪い時もある。日本人は、幼い頃から相手を思いやる気持ちを教わっている。そういう性格は(ダブルスに)向いていると思うし、互いの力を発揮しやすい理由だと思う。外国勢にはパワーではかなわないので、そこをペアとどう補うかという。外国人と組むときは、日本人の特徴を理解している相手と組むのが大事。二宮・穂積ペアが全仏で準優勝できたのは、日本人同士でコミュニケーションが取りやすかったのもある。ここ数年は、世界ランキングで50位前後にいる日本選手が多く、ダブルスだったら通用するという思いも、プラスアルファにはたらいたと思う。 ――ウィンブルドンではウェアは白と決められている。ファンは選手の着こなしも楽しみだが シンプルだからこそ難しい。男子なんて襟があるかないかとか、その程度の差ぐらいしかないほど、年々、基準が厳しくなっている。私が現役最後の頃は、靴下にうっすらとグレーの線が入っているだけでも「微妙」と言われたことがある。女子の場合はセパレートタイプなのか、ワンピースなのか。肩を出すか出さないかということや、ラインの違いを楽しむくらいしかないので、着こなしを楽しむのは難しいかも。 ――大会を中継するWOWOWのテニスアンバサダーを務める。試合を解説するにあたっての心がけは 引退したてで、誰よりも選手の立場に近いので、心理状態が一番分かる。技術的なことよりも、そのあたりを話す方が、また違った角度からテニスの面白さを伝えることにつながると思う。難しいけど、見る人に分かりやすくというのを意識しています。 |
錦織は?大坂は? ウィンブルドンの戦い伊達さんに聞く
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