優勝を決めたナダルの豪快なショット=ロイター
テニスの全仏オープンは11日、パリのローランギャロスで最終日が行われ、男子シングルス決勝で第4シードのラファエル・ナダル(スペイン)が第3シードのスタン・バブリンカ(スイス)を6―2、6―3、6―1で破り、3年ぶり10度目の頂点に立った。同一の4大大会を10度制するのは1968年のオープン化(プロ解禁)以降、男女を通じて初めて。ナダルの4大大会優勝は15度目でロジャー・フェデラー(スイス)に次ぐ単独2位となった。優勝賞金は210万ユーロ(約2億5830万円)。
女子ダブルス決勝は第1シードのベサニー・マテックサンズ(米)、ルーシー・サファロバ(チェコ)組がアシュリー・バーティ、ケーシー・デラクア組(オーストラリア)を6―2、6―1で破って2年ぶり2度目の優勝を果たした。
第14日の10日は男子ダブルス決勝でライアン・ハリソン(米)、マイケル・ビーナス(ニュージーランド)組が初優勝。車いすの女子ダブルスで上地結衣(エイベックス)がマリヨレン・バウス(オランダ)とのペアで優勝し、シングルスとの2冠を達成した。
■ナダル、前人未到の10度目の栄冠
まだ西日がセンターコート全体を照らす午後5時半前、歓喜のナダルが大の字になり、前人未到の10度目の栄冠に浸った。
コートに影が差す時間帯まで続く激闘を期待した大観衆には、拍子抜けの2時間5分だった。これまで4大大会決勝で3戦全勝と大一番に強いバブリンカに対し、1回しかブレークポイントを許さなかった。
ナダルは決勝に向け、母国語のスペイン語で報道陣に作戦を明かしていた。「彼が強打を放てる位置取りを許したら危ない。球足の長い打球を打てれば支配できる」。有言実行でバブリンカをコート後方に押しこみ、強打を封じた。左手首痛で棄権した昨年と違い、強烈な回転がかかるフォアの豪打が戻っていた。
表彰式では、19歳で初出場、初優勝を果たしてからの足跡をたどる映像がスクリーンに映し出された。4度目の優勝までは、太い両腕が強調される袖無しのウエアがトレードマークだった。今は半袖。年輪を重ね、相手の意図を読む頭脳的プレーに磨きがかかる。
「初優勝したときに2017年のことを聞かれたら、(故郷の)マジョルカ島で釣りを楽しんでいると予想したんじゃないかな。こんなに長く現役を続け、多くの大会で優勝するなんて想像もしなかった」
10度目の栄冠の感慨を聞かれ、「31歳で、もう少年じゃないし、けがもあったから特別な思いがある」。7試合を戦い、1セットも落とさなかった。赤土の王者の復権だった。(稲垣康介)