三段跳びの元日本女王で、車いす陸上に出場した中尾有沙
三段跳びの日本選手権女王として輝いた陸上の舞台に、車いすの選手として戻ってきた。障害者陸上の日本パラ陸上選手権は11日、東京・駒沢陸上競技場であり、女子100メートルで中尾有沙(ありさ、29)=祐和会=が20秒80で2位になった。「(健常者陸上では)かなえられなかった日本代表になりたい」と夢を語った。
熊本・阿蘇高出身。2015年、陸上の日本選手権女子三段跳びで13メートル09で優勝した。しかし、リオデジャネイロ五輪代表を目指していた16年1月30日、バーベルを肩に担いでトレーニングしていた際、転んで脊髄(せきずい)を完全損傷し、下半身がまひした。
病院に運ばれて診断を受けるまで数時間。足の感覚がなくなっていくのを感じ、覚悟したという。春には地元が地震に襲われ、悲しい出来事が重なった。
けがをした当初はスポーツをしようとは思わなかった。しかし、競技場でなく、病院のテレビで陸上競技を見る自分に寂しさを感じた。「もう一度スポーツがしたい。競技場に戻りたい」。思いがこみ上げた。
昨年11月に競技用の車いすに初めて乗り、今年5月、障害者の大会に初めて出場した。「懐かしい気持ちになりました」
この日は3度目の公式戦で、車いすをまっすぐ走らせることにも苦戦した。2位にも「練習したことを出すのが難しい。不完全燃焼」と言う。「三段跳びで目指していた、世界で戦える選手になりたい。東京パラリンピックまであと3年のこの時期に、車いす陸上に出会えた。厳しいかもしれないが、目指したい」(後藤太輔)