代理人の弁護士(右)とともに記者会見する前川喜平・前文科事務次官=25日午後4時47分、東京・霞が関、飯塚晋一撮影
文部科学省の再調査の結果を受け、同省の前川喜平・前事務次官は15日、コメントを発表した。内容は以下の通り。
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もともとあった文書が「あった」と確認されたのは当然のことですが、この間、文部科学省の中で多くの人が苦しい思いをしていることには、大変心を痛めています。松野大臣は苦しいお立場の中で、職員のことを思いつつ、精いっぱいの誠実な調査を実施されたと受け止めております。
これらの文書に記載された「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」といった内閣府の発言は、今治市における獣医学部の開設の時期を平成30年4月とすることを指すものであることは文書の記載から明らかです。私自身も、平成28年9月末から10月半ばにかけて、内閣府との打合せに出席した文科省の担当者から、内閣府の藤原審議官から明示的に、今治市に獣医学部を新設し平成30年4月に開設することについて「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」という発言があったと報告を受けております。彼らは、内閣府の性急な方針に大変困惑していました。これら一連のやりとりが加計学園の獣医学部を指していることは、今回存在が確認された文書の記載からも明らかです。このような強引な進め方により、規制改革の是非の判断に必要な検討が行われなかったことが問題だと思います。
私は、必要な規制改革はどんどん進めるべきだと思いますが、公費の投入を伴う場合や、特に国家戦略特区は特定の主体に特別の措置を講じる制度ですので、このような場合には、特に透明性を確保しつつ十分な検討・検証を行った上で、確たる根拠を持って、公正・公平に手続きを進めるべきだと思います。
今後は、内閣府及び国家戦略特区諮問会議において、国家戦略特区で加計学園の獣医学部新設を認める過程の中で、具体的にどのような検討・検証を行ったのか、又は行わなかったのかを、国民の前に明らかにし、様々な疑問点について説明責任を果たしていただきたいと思います。国家戦略特区制度の主務官庁は内閣府です。責任を文科省に押しつけるなど言語道断です。
具体的に内閣府に説明してもらいたい疑問点は、次のような点です。
Ⅰ.加計学園が設置する獣医学部は、国家戦略特区制度が目的とする国際競争力の強化や国際経済拠点の形成に資するものなのか
Ⅱ.加計学園が設置する獣医学部は、『「日本再興戦略」改訂2015』で閣議決定された4条件を満たすものなのか、特に、獣医師が新たに対応すべき分野の人材養成の必要性やその規模は明らかにされたのか、その人材養成は既存の大学では対応困難であり加計学園の獣医学部を新設することが解決策として適切なのか、そして加計学園を卒業した人材が本当に新たな分野に向かうのか
Ⅲ.内閣府は、人材需要に責任のある農水省と厚労省を、人材需要の検討に実質的に参画させたのか、特にライフサイエンス等の新たな分野における獣医師の需給についてきちんと検証したのか、検証したのであれば、どの省庁がどのような根拠を示して説明したのか
Ⅳ.諮問会議は本当に十分な情報に基づいて実質的な議論をしたのか、また、関係省、関係団体、関係業界、学者、専門家などからの意見聴取は十分行ったのか
Ⅴ.内閣府は今治市と密接に連絡を取りあい、最終的に加計学園を特定事業者とすることを、初めから決めていたのではないか、また、今治市の提案と京都府・京産大の提案との比較検討は十分行われたのか
Ⅵ.11月9日の諮問会議決定に「広域的に」「限り」の文言が入ったこと(本日、文科省から公表された資料には、萩生田官房副長官の指示とされている)、11月18日の共同告示のパブコメで「平成30年4月開設」が条件とされたこと、1月4日の共同告示で「1校に限り」とされたことを、どう説明するのか
これらの疑問点について、内閣府は真摯に調査し、その結果を国民が納得できるようしっかりと説明する必要があると思います。
前川 喜平