EU首脳会議のトゥスク常任議長=AFP時事
英国が欧州連合(EU)に残留することは夢か――。ベルギー・ブリュッセルで22日に始まったEU首脳会議で、英国のEU離脱を巡って、ジョン・レノンの名曲「イマジン」を引用したトゥスク常任議長のスピーチが話題を呼んだ。
英国人の何人かの友人に「英国がEUの一部として残るという結果は想像できるか」と聞かれたというトゥスク氏はスピーチで、「成し遂げることが不可能と思われた夢の上にEUは築かれた」と答えたことを紹介。そのうえで「誰も結果は分からない」と述べ、「私のことを夢想家というかもしれない。でも、それは私一人だけではないはず」とイマジンの歌詞の一節を引いた。
EUと英国との離脱交渉は、英国の離脱決定から約1年を経た19日に始まったばかり。EUの大統領に相当する人物による、このタイミングでの残留を願う発言に会議に集まった複数の加盟国首脳が反応した。
ロイター通信によると、オランダのルッテ首相は「我々はみんな、その夢を持っている。あらゆる角度から英国の離脱を憎んでいる」と理解を示しつつ、「これは英国民による決定だ。民主主義とやりあうことはできない」と話した。一方、ベルギーのミシェル首相はツイートで「今は確実なものや行動のための時で、不確実なものや夢のための時ではない」と指摘した。
その後の会見で真意を問われたトゥスク氏は「夢のない政治は悪夢。私の欧州での経験からすると奇跡は起き、それこそ政治の最も良い部分だ」と答えつつ、「私は現実主義者でもある。だから、第一に交渉を始めなければならない」と釈明した。
隣で聞いていたユンケル欧州委員長はすかさず、「レット・イット・ビー(あるがままに)」とビートルズの名曲のタイトルを引用して発言し、けむに巻いた。(ブリュッセル=津阪直樹)