「所有者不明土地」なぜ増える?
相続未登記などで所有者が分からなくなっている可能性がある土地の総面積が、九州より広い約410万ヘクタールに達するとの推計結果を、有識者でつくる所有者不明土地問題研究会(座長・増田寛也元総務相)が26日公表した。こうした土地の増加は、森林の荒廃や土地取引の停滞などにつながるとして、研究会は年内に対策案を政府に提言する。
研究会は、名義人の死亡後も相続登記されなかったり、住所が変わって名義人と連絡がつかなくなったりしている土地を「所有者不明土地」と定義。国土交通省の地籍調査や人口動態などを加味して推計したところ、所有者不明土地の総面積は、九州の面積(368万ヘクタール)を上回った。
土地の筆数でみた所有者不明率は20・3%となり、土地の種類別では宅地が14%、農地が18・5%、林地は25・7%だった。全国約10万筆を対象に、最後の登記から50年以上が経過し、所有者が不明になっている可能性がある土地の割合が22・4%になるとした法務省のサンプル調査と似た傾向となった。
これだけの土地が所有者不明とみられる背景には、人口減少で土地の資産価値が下がっていることがある。資産価値がなくても管理コストや登録免許税、固定資産税などの負担がかかるため、法定相続人がだれも相続登記せず、長年にわたって放置される構図だ。何十年も放置されると子や孫の代になって相続人がどんどん増えていき、事実上、相続も売却もできない「塩漬け物件」となる。
国土交通省の調査をもとに、不動産登記後の年数と所有者不明率の関係を調べると、最後の登記から30年未満だと不明率は21%にとどまるが、50~69年になると62%、90年以上では80%に達した。
研究会は今年1月から、自治体からの聞き取りなどで実態を調べてきた。登記簿上の所有者が満州国在住になっている、固定資産税の納税通知を送っても多くが戻ってくる、といった事例があったという。
研究会では、所有者不明土地の対策として、政府や自治体がバラバラに管理している不動産に関する台帳のネットワーク化や、土地の放棄や寄付の受け皿づくりなどを挙げる。政府も、不明土地を公的な事業に利用できるようにする制度の検討を始めるなど対策に乗り出している。
この日の会見で、増田氏は「今後、将来予測や経済的損失の試算もしていく」と話した。(大津智義)