健大高崎の二盗を2度刺した西邑楽の茂木(右)=山口史朗撮影
(9日、高校野球群馬大会 健大高崎5―0西邑楽)
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「もっと走ってこい。全部、刺してやる」。9日にあった群馬大会2回戦で健大高崎と戦った西邑楽(おうら)の捕手、茂木は最後までひるまなかった。
足を絡めた攻撃を武器とする健大高崎の代名詞は、「機動破壊」。この春の選抜でも4試合で13盗塁。制球を乱される投手、送球を焦って捕球ミスする捕手……。その足に、全国の強豪たちがかき乱されてきた。「必ず走ってくると思っていた」と茂木。一回、出塁した1番打者に走られ、先制点を許した。
が、心は折れない。「次は絶対刺す」。そして、念じた。
「走ってこい」
対戦が決まってからの3週間あまり、県立校の西邑楽のバッテリーは機動力対策に明け暮れてきた。投手の伊与久は一塁への牽制球、そしてクイック投法の練習を繰り返し、茂木は二塁送球の練習を毎日のようにやった。捕球から二塁ベースに送球が到達するまでの時間は、高校生では速いとされる2秒を切るまでになった。
一回に伊与久が牽制で走者を誘い出すと、二、五回は茂木が二盗を刺した。「捕手もいいし、投手のクイックも速かった」と健大高崎の青柳監督。中盤以降は、ほとんど仕掛けられなくなった。
2本の本塁打を浴びて0―5で敗れたが、茂木の目に涙はなかった。「3年を中心に、練習でやったことが出せましたから。盗塁を二つもさせて気持ち良かった」。卒業後は就職して軟式野球をやる。「健大より走ってくるとこなんて、この先もないでしょうね。多分、キャッチャーやるんですけど、自信持ってやります」。機動破壊を封じた夏は、野球人生の勲章だ。(山口史朗)