優木まおみさん=西田裕樹撮影
多様な学びの選択肢が広がる中、国公立大で学ぶ意義は何でしょうか。東京学芸大を卒業した優木まおみさんに聞きました。
「お金がないから、国立大学しか行かせられない――」。高1のころ、両親にそう言われました。実家は佐賀で、ラーメンが1杯500円ぐらいの中華料理屋を営んでいます。裕福な家庭ではないので、学費や寮費が安い国立大なら進学してもいいと言われました。
それから、私立大には目もくれず、国立大だけを調べました。国立大の受験は全科目をまんべんなくできなくてはいけないので、苦手な理科もやりました。大学進学を目指したのは、東京のテレビのキー局のアナウンサーになりたいという夢があったからです。そのために東京の大学に行くのが一番の近道だと思っていました。東京にすごく憧れがあったんです。
進学した学芸大では、家賃が月額3千円の寮に入りました。生活費は光熱費を含めて月に1万円。育英会(現・日本学生支援機構)の奨学金4万6千円を借り、1年生の後半からは保護者の低所得を理由に学費免除を受けました。アルバイトをして、両親からの仕送りはもらわずに生活できました。
ただ、いざ大学に入ってみるとイメージと違って。友だちはできないし、授業にも興味が持てず、単位を落としてしまいました。大学にいる目的を見失って、「これじゃダメだ」と思い、留学しようと決めました。バイトを三つくらい掛け持ちで100万円ほどためて、手数料がかかるから業者も通さず手続きをすべて自分でやって、1年の後半からハワイ大学に留学しました。
ハワイでの生活は刺激的でした。日本では友だちができないと悩んでいましたが、ハワイでは殻に閉じこもっている場合ではなかった。自分をさらけ出せたことで、7カ月後に帰国してからは大学の勉強もやる気を取り戻しました。
でも、正直に言うと、教員免許を取って卒業しても、20代のころは「大学なんて無意味だった」とずっと思っていました。アナウンサー試験は落ちたし、グラビア撮影には大学の勉強は役に立たない。東京に出て行くためだけに偏差値で入れる大学を選び、本当に学びたいことを考えていなかった結果です。
気持ちが変わってきたのは30代になってから。子育てに追われて自分の時間がなくなると、勉強する時間が貴重だと感じるようになりました。最近、個別保育の職業資格「チャイルドマインダー」取得を目指しています。勉強していると達成感と自分の成長を感じることができました。大学の時はそれに気づけていなかったんです。だから、無意味だと思っていた教員免許も10年で失効してしまうので、大学で30時間の講習を受けて更新しました。
大学で学ぶことは、すべてがすぐに役に立つとは限りません。教員になった同級生たちは、大学では教えてくれなかった「保護者との付き合い方」に一番苦労していると聞きます。大学は社会に出る助走のようなもので、大学の勉強だけでは社会に出ると厳しい。アルバイトでも留学でも、恋愛でも、社会で人間力を身につけることも、大学時代だからこそできる大事な学びです。(聞き手・斉藤寛子)
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〈ゆうき・まおみ〉 1980年佐賀県生まれ。2003年3月に東京学芸大小学校教員課程国語科卒業後、バラエティー番組や女性誌のモデルなどで活躍。13年に結婚し、14年に長女、17年に次女を出産した。Eテレ「すくすく子育て」や、日本テレビ「スクール革命!」に出演中。