のどあめの原料になるカミツレの畑(秋田県八峰町、龍角散提供)
サンショウやニンジン、カミツレ……。国内で薬用植物(薬草)の栽培が広がっている。中国産の価格が高騰。一方で、抗がん剤の副作用の軽減など医療現場での漢方薬の需要は高まっている。ハーブ園などを活用した集客や地域活性化への期待も膨らむ。
高知県中西部の山あいにある越知町(おちちょう)には、セリ科の多年草ミシマサイコの畑が点在している。根がイライラや不眠に効く漢方薬「抑肝散(よくかんさん)」の原料になる。
ピーマンやショウガを露地栽培してきた同町で薬草栽培が始まったのは32年前。最初は約10戸。農事組合法人ヒューマンライフ土佐の山中嘉寿馬(かずま)組合長(71)は「初めはこんな草がお金になるのかなと思った」と話す。
栽培農家は年々増え、現在四国4県の約430戸が組合に加入。サンショウ、ダイダイなども作り、同組合の生産額は年約4億円に上る。
薬用植物の栽培自体には規制はない。ただ、漢方薬にする場合は医薬品医療機器法を含めた様々な基準に適合する必要があるため、生産地の多くが製薬会社と連携して栽培を進めている。ヒューマンライフ土佐も漢方薬大手のツムラ(東京都港区)と提携している。
日本特産農産物協会によると、健康食品などの原料も含め、2015年時点で北海道、富山、島根など43道府県の約5300戸が栽培に携わる。栽培面積はこの10年で1・4倍になった。漢方薬の生産額も06年の約1170億円から増え、15年は約1670億円に。
背景には、国内の医療現場での漢方薬の需要増などがある。
例えば、サンショウやニンジン…