被災した牛舎を見て回る高倉守雄さん=15日、福岡県朝倉市杷木星丸
九州北部の豪雨で被災した福岡県朝倉市と東峰村では、計1700戸余りで断水が続いている。長引く捜索活動や、大雨のたびに出される避難指示に阻まれ、復旧作業は滞りがちだ。日常生活だけでなく、畜産や医療にも影響が出ている。
特集:九州北部豪雨
豪雨被害が大きかった朝倉市杷木地区。酪農を営む高倉守雄さん(51)は15日、静まりかえった牛舎を前に途方に暮れていた。飼っていた乳牛21頭は、市内外の牧場にいったん引き取ってもらえた。ただ、搾った牛乳を冷却保存するバルククーラーの被害に頭を悩ませていた。
クーラーが水につかるなどして止まったため、冷蔵していた約300キロの牛乳は腐ってしまった。牛乳を取り出し、クーラー内を清掃する必要があるが、「洗うには水がないとどうにもならない。牛が無事でも、これが動かないと商売にもならない」とこぼす。
医療機関でも、水を確保する対応に追われている。80人が人工透析を受けていた森山内科(同市杷木池田)では5日の断水直後、全員を県内外の病院へ紹介する手続きをした。現在は自衛隊の給水車が来るため、透析も可能になりつつあるが、森山敦夫院長(64)は「医師が手を洗うにも水が必要。早めの復旧をお願いしたい」と話す。
和田外科医院(同)では、治療のための水を職員が50リットル分、ポリタンクで避難所にくみに行くのが日課となった。「大変ですけど、はさみやピンセットの消毒のために水は不可欠ですから」と担当者は言う。
杷木地区が断水した原因は、杷木浄水場(同市杷木林田)が冠水したこと。市によると、近くを流れる赤谷川が氾濫(はんらん)して濾過池(ろかち)に土砂が流れ込み、5日から稼働が止まったという。
当初は大量のがれきが一面にあ…